『居眠り磐音 江戸双紙』第21巻「鯖雲ノ城」&第22巻「荒海ノ津」/佐伯泰英

20120816

第21巻「鯖雲ノ城」

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この巻での大きな出来事は、海路三十余日、豊後関前藩御用船正徳丸の舳先に立った磐音とおこんは、断崖に聳える白鶴城を望んでいた。とうとう関前の地をおこんが踏むことになる。
磐音が修行した中戸信綱道場は、中戸信綱が身体を壊していて、覇気がなく寂れていた。それに代わるように諸星十兵衛の道場が盛んになっていたが、磐音の父正睦が藩財政立て直しのため協力を願った中津屋と諸星十兵衛の悪事が次第に明らかになってくる。

おこんは磐音が選んだ淡い小豆地の江戸小紋千鳥模様をきりりと着こなし、帯締めの飾りに磐音の母から贈られた、緑と赤と紫色が混じった大粒の瑪瑙をつけて、磐音の父と母が待つ湊に降り立つ。
湊には磐音の父と母、磐音の妹伊代、伊予の夫である井筒源太郎とその弟遼次郎が出迎える。

着物の模様「小紋」というのは、元々武家の裃に染められたもので、型紙は和紙を重ねて柿渋を塗り、何日も燻して作られる、伊勢の白子の型紙が江戸でも知られていた。この型紙に職人が精魂を傾けていささかの狂いもなく極小精緻な模様が彫られるので、染め上げて仕立てたときに凛とした気品を放った。

関前に着いた翌日、まず坂崎家の菩提寺に参ったのち、磐音の母、妹、磐音、おこん、辰平は母の実家の菩提寺にお参りする。浜から上がる石段の左右には白萩が咲き乱れていた。
石段の上から振り返ると、海の上に白鶴城が聳え、優美な天守が鰯雲の空を背景に浮かんでいた。
磐音はおこんに、関前ではこの雲を「鯖雲」と称して、鯖の豊漁の兆しと漁師に喜ばれることを説明する。
この巻の題名の由来である。

関前に着いてから開けるように今津屋の内儀お佐紀から云われていたおこんが長持ちを開けてみると、おこんの花嫁衣裳一式、お色直しの衣服、磐音の佐々木家の家紋入りの継裃まで入っており、感激した坂崎家の決定で、急きょ仮祝言をあげることになる。
そして、私が嬉しかったのは、ここで「加賀友禅」が登場したことである。私の郷里は金沢の隣町なので。
磐音の母が、磐音の妹伊代のために用意したのだが、伊代には着こなせずにいた華やかで雅な着物を、お色直しにおこんが着ることになった。

磐音とおこんは、漁師の雲次の船で猿多岬に向かう。河出慎之輔、舞、小林琴平の墓参である。三人は城下に葬られぬ身と、騒ぎが納まってから磐音の父正睦が、城が見える岬の場所に自然石の墓石で弔っていたのだ。

同行してきた松平辰平は、磐音、おこんと別れて、九州の道場を廻る回国修行に出ることになった。約二年の予定である。


この巻で、磐音が相対したのは、雲弘流、柳生新陰流、タイ捨流。その他は流派の説明なし。


第22巻「荒海ノ津」

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この巻での大きな出来事は、玄界灘の荒波が初冬の気配を漂わす頃、豊後関前を発った磐音とおこんは筑前博多にたどり着く。福岡藩ご用達商人箱崎屋次郎平の招きに応えての訪問であった。豊後関前藩財政再建に食い込み悪事を働いた中津屋は、箱崎屋の奉公人だった。その責任を取り箱崎屋は関前藩財政再建に協力することになった。
それから品川柳次郎の身に大きな変化が起こる。父親は女郎に入れあげて家に戻らず、長男も家を飛び出しもと遊女と所帯を持って二人も子をなしていた。上役から再三の呼び出しがあり、柳次郎は母親と相談し、もはや品川家は断絶。拝領屋敷は出なくてはならないから、どこかの長屋に移らねばと、鬱々した日々を送っていた。
その時に、昔子供のころ一緒に遊んでいた「椎葉お有」と再会する。父親は同じご家人だったが、学問所勤番組頭に出世していた。
たまたま品川柳次郎とお有の二人に会った今津屋の内儀お佐紀の依頼で、佐々木玲園、速水左近が動き、品川柳次郎の明日が開けていく。

福岡藩は五十二万石、関ヶ原の戦いで徳川家康に与し、小早川秀秋を西軍から東軍に寝返らせた功績により、黒田氏に筑前一国が与えられた。居城は「舞鶴城」。

磐音は箱崎屋次郎平の頼みで、藩道場に顔を出し、そこで佐々木玲園の後継者たる腕前を披露するが、前国家老「吉田のご隠居」の執拗なる問いに、居眠り剣法「後の先」は、関前藩国家老宍戸文六の姦計により、親友小林琴平との死闘の際に生まれたものであることを述べる。あの時九割九分の時間を琴平が支配し、琴平の苛烈な攻撃を凌ぎに凌いで最後の最後に出した一手が勝敗を決した。
そのことを改めて磐音は思い出すのであった。

箱崎屋次郎平の次女お杏の案内で玄界灘をのぞむ荒戸浜に磐音とおこんが行くが、これが題名の「荒海ノ津」である。
ここで磐音は旅の武芸者に絡まれた若侍と武家娘を助けるが、なぜか二人は早々に姿を消してしまう。身分違いの恋の二人であった。


この巻で、磐音が相対したのは、丹石流、以心流、伊藤派一刀流、鹿島神伝流、神影流、その他は流派の説明なし。
磐音が不在の佐々木道場で、磐音の代わりに佐々木玲園が相対したのが疋田流槍術、無住心剣流。


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

このシリーズを読んでいて、違和感を覚えるのが「おこんの貫禄」で、いくら美人で、店の裏方の親玉だからと言っても、所詮、奉公人ですから。そして、奥方が彼女に結婚式の立派な衣装を長持ちに入れて贈ると言うのですから、ちょっと行き過ぎではないかと思います。と言っても、この祝言の場面等、物語的には素晴らしいのですが。

それにしても、豊後関前藩って、すぐに悪者が現れるのですよね。以前は、江戸詰の役人でしたし、次は御用商人と上層部武士でしたし。こう言うのは、やはり、人間の性でしょうね。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
この居眠り磐音シリーズは、「あり得ない」話が
軸になっていますよね。
磐音にしてからが、浪人してから鰻割きで生計を立てる
なんてところは、それっぽいですが、
将軍にまで名を知られるなんてのは、出来すぎ(笑)

でも、だからこそスカッとした痛快味がなんともいえません。

関前藩里帰りのあたりが

どうも磐音クンたちはいちばん幸せだったような気がしてならないのですが、「ありえない」話の最たるものは、世嗣家基の夢をあやつる怪しい武芸者と、その夢の中に入り込んで磐音クンも戦ってしまうというお話(^o^)/
あれがワーストワンでしたね!

narkejpさん

コメントありがとうございます。
世嗣家基の夢をあやつる話まで、私は行って
いないのです。
そんな話も、これからあるんですね。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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