『居眠り磐音 江戸双紙』第25巻「白桐ノ夢」&第26巻「紅花ノ邨」/佐伯泰英

20121215

第25巻「白桐ノ夢」
121012iwane25.jpg

この巻での大きな出来事は、西の丸家基が、もと道場の師範・依田鐘四郎を通して磐音に言伝をし、宮戸川のかば焼きと桜餅を桂川補周と磐音が西の丸に届ける。そして殴られ屋の向田源兵衛が登場する。今津屋で見掛け、殴られ屋をやっていて騒ぎが起こりそれを磐音が助けて、道場の客分にする。安芸広島藩の紛争に関わって藩を抜けたらしい。
田沼意次の西の丸家基を狙う次の手は、乱破雑賀衆の刃となって磐音たちを襲う。

大工の棟梁銀五郎が磐音とおこんの子が生まれ、成人したときに何か良い道具が作れるようにと白桐の苗を庭に植えた。すでに淡紫色の花が清楚に咲いていた。この巻のタイトルである。

同じ道場で競い合っていた辰平が武者修行の旅で、目録をもらうという効果をあげた便りに利次郎が焦っているのを磐音が厳しい稽古をつけたあとで「直心影流の兵法目録に「十悪非(あらず)」とある、と諭す。
十悪とは我慢、過信、貪欲、怒り、恐れ、危ぶみ、疑い、迷い、侮り、慢心をいう。
迷いとは二つの考えが心の中で閲ぎ合い、対立する動きである。辰平の修行を認めようとする心と辰平に負けてなるものかという気持ちが相争い、そなたから余裕を奪っていた。直心影流初伝に 『一个(いっか)の私念が萌せば則ち自ら滅亡を取る事必せり』と戒めておられる。剣を志す者、常に平常心を保つよう努力し、断じて邪心、妄念を生じさせてはならぬのだ」
「はい」 利次郎が必死に頷く。「稽古に入る前に、そなたはそれがしに今の気持ちを披露したな。辰平には辰平
の行く道あり、そなたにはそなたの進むべき道がある。だが、その辿り着く頂きは同じところだ。道中の早い遅いを迷うたところでなんの意味があろう」
「若先生、いかにもさようでした」
利次郎が莞爾と笑った。

隅田川沿いの長命寺境内の桜餅の話が出てきた。今年の春に隅田川の両岸を歩いた時に立ち寄ったところだ。元祖山本屋と大黒屋の二つがあり、この本では船頭の小吉の勧めで、磐音とおこんは大黒屋に寄るが、私は山本屋に寄った。そこの二回に正岡子規が暮らしたことがあったからである。

品川柳次郎が椎葉お有に尻をたたかれ、佐々木道場に通うことになる。

竹村武左衛門が仕事で怪我をする。娘の早苗が家の窮状を見かねて、どこかに奉公に出たいと宮戸川に相談する。磐音はおこん、両養親に相談し、佐々木家に奉公できるように計らう。

この巻で、磐音が相対したのは、間宮一刀流、奥山流、乱破雑賀衆、他は特に流派の説明なし。


第26巻「紅花ノ邨」
121012iwane26.jpg

この巻での大きな出来事は、磐音の許嫁だった小林奈緒が白鶴太夫となり、紅花大尽の前田屋の嫁になったが、吉原会所からの連絡で、前田屋が乗っ取られそうな騒動が起こっているというので、磐音は吉原会所の若い者と一緒に山形に出向く。どうも山形藩の悪い人間が紅花を藩の専売制にしようと姦計をめぐらしているらしい。
これが山形藩を二分する騒動になる。

紅花や紅は「万葉集」に多くみられるというから、古代からのものである。また淡い紅色が日本人に深く愛された要因の一つに、冠位や身分を示す青、赤、黄丹(きあか)、支子(くちなし)、深紫(こきむらさき)などの禁色の赤だが、薄い紅花の赤は「許色(ゆるしいろ)」として使うことが許されていた。

まばゆいばかりの黄色の花畑から、女衆が花びらを摘む。
紅花は薊の仲間だから、茎や葉の縁に棘がある。花を摘むとき、棘が刺さって痛いのだが、朝早く露が上がらないうちに摘むと、棘がやわらかで手に刺さらないそうだ。
家に持って帰り、庭に広げた筵の上に干して、黄色がいい花びらだけを選び出す。
選んだ花びらを桶に入れて女の素足で踏み込む、そうすると黄色の色の素が流れ出る。
黄色を絞り出した花びらを筵に並べて乾燥させ、一昼夜放っておくと、赤く発酵する。真っ赤に発酵した花びらを木臼に入れて、餅みたいに杵で搗くと、赤餅のようになる。
搗いた紅餅を手で丸めて小分けにする。その丸紅餅を筵に並べて、その上から別の筵をかける。
その上に女衆が乗って、甚句なんぞを歌いながら、また踏む。
頃合い、紅餅をひっくり返して乾燥させれば、紅の原料の紅餅の出来上がり。
これが千石船で京や江戸に送られる。

騒動の中、奈緒は鍵を握る文書を携えて姿を消していたが、それを追う磐音と再会する。しかしそれは磐音が奈緒の後ろから語りかける形で、結局奈緒は振り向いて磐音の顔は見なかった。奈緒の覚悟である。
磐音は奈緒に、琴平、慎之助、舞の三人は、白鶴城を見下ろす猿多岬の墓地に眠っていることを教える。
そして、いつの日にか前田内蔵助と一緒に参るよう奈緒に言うのだった。

この巻で、磐音が相対したのは、一寸剛流、無外流、林崎夢想流、鹿島新陰流、他は特に流派の説明なし。


スポンサーサイト

コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

私が読んだのは25巻までなので、ついに追い越されてしまいましたね。

第25巻では、かば焼きと桜餅を西の丸に届ける場面と、武左衛門の娘が奉公に入る場面が良かったことを思い出しました。

matsumoさん

コメントありがとうございました。
そうですか、matsumoさんは25巻で打ち切りですか。

西の丸家基様と磐音の交流がなんともほのぼのとして、
いいですよね。

武左衛門の娘早苗の健気な頑張り屋さんの
姿もいいです。
非公開コメント
プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード

Pagetop