古事記を知る(12)

20130219

3.天照大神と須佐之男命
3-1 須佐之男命の神やらひ
故各随依賜之命所知看之中。速須佐之男命。不知所命之國而。八拳須至于心前。啼伊佐知伎也。
自伊下四字以音下効此其泣状者。青山如枯山泣枯。河海者悉泣乾。是以悪神音。如狭蠅皆満。萬物之妖悉發。故伊邪那岐大御神詔速須佐之男命。何由以汝不治所事依之國而。哭伊佐知流。爾答白。僕者欲罷妣國根之堅洲國故哭。爾伊邪那岐大御神大忿怒。詔然者汝不可住此國。乃神夜良比爾夜良比賜也。自夜以下七字以音故其伊邪那岐大神者。坐淡海之多賀也。
故於是速須佐之男命言。然者謂天照大御神将罷。乃参上天時。山川悉動。国土皆震。爾天照大御神聞驚而。詔我那勢命之上来由者。必不善心。欲奪我國耳。即解御髪。纏御美豆羅而。乃於左右御美豆羅。亦於御鬘。亦於左右御手。各纏持八尺勾璁之五百津之美須痲流之珠而
自美至流四字以音下効此於曾毘良邇者負千入之靫。訓入云能理下効此自曾至邇以音附五百入之靫。亦所取佩伊都此二字以音之竹鞆而。弓腹振立而。堅庭者於向股踏那豆美三字以音如沫雪蹶散而。伊都二字以音之男建訓建云多邢夫踏建而。待問。何故上来。爾速須佐之男命答白。僕者無邪心。唯大御神之命以。問賜僕之哭伊佐知流之事故。白都良久。三字以音僕欲往妣國以哭。爾大御神詔。汝者不可在此國而。神夜良比夜良比賜故。以為謂将罷往之状参上耳。無異心。

(読み)
 カレオノモオノモヨサシタマヘルミコトノマニマニシロシメスナカニ  ハヤスタノヲノミコト ヨサシタマヘルクニヲシラサズテ ヤツカヒゲムナサキニイタルマデ ナキイサチキ ソノナキタマフサマハ アヲヤマヲカラヤマナスナキカラシ ウミカハハコトゴトニナキホシキ ココヲモテアラブルカミノオトナヒ サバエナスミナワキ ヨロズノモノノワザハヒコトゴトニオコリキ カレイザナギノオオミカミハヤスサノヲノミコトニノリタマハク ナニトカモミマシハコトヨサセルクニヲシラサズテ ナキイサチルトノリタマヘバ マヲシタマハク アハハハノクニネノカタスクニニマカラムトオモフガユエニナクトマヲシタマヒキ ココニイザナギノオホミカミイタクイカラシテ シカラバミマシコノクニニハナスミソトノリタマヒテ スナハチカムヤラヒニヤラヒタマヒキ カレイザナギノオホミカミハ アフミノタガニナモマシマス
 カレココニハヤスサノヲノミコトマヲシタマハク シカラバアマテラスオホミカミニマヲシテマカリナムトマヲシタマヒテ スナハチアメニマイノボリマストキニ ヤマカハコトゴトニトヨミ クニツチミナヨリキ ココニアマテラスオホミカミキキオドロカシテ アガナセノミコトノボリキマスユエハ カナラズウルハシキココロナラジ アガクニヲウバハムトオモホスニコソトノリタマヒテ スナハチミカミヲトキ ヒダリミギリノミミズラニモ ミカズラニモ ヒダリミギリノミテニモ ミナヤサカノマガタマノイホツノミスマルノタマヲマキモタシテ ソビラニハチノリノユギヲオヒ イホノリノユギヲツケ マタイツノタカトモヲ トリオバシテ ユハラフリタテテ カタニハハムカモモニフミナヅミ アワユキナスクエハララカシテ イツノヲタケビ フミタケビテマチトヒタマハク ナドノボリキマセルトトヒタマヒキ ココニハヤスサノヲノミコトノマヲシタマハク アハキタナキココロナシ タダオホミカミノミコトモチテ アガナキイサチルコトヲトヒタマヒシユエニ マヲシツラク アハハハノクニニマカラムトオモヒテナクトマヲシシカバ オホミカミ ミマシハコノクニニハナスミソトノリタマヒテ カムヤラヒヤラヒタマフユエニ マカリナムトスルサマヲマヲサムトオモヒテコソマイノボリツレ ケシキココロナシトマヲシタマフ。

 (現代語訳)
 こうして、それぞれ御委任になったお言葉にしたがってお治めになったが、その中で速須佐之男命だけは、委任された国を治めずに、長い顎髭が胸元にとどくようになるまで、長い間泣きわめいていた。そのはげしく泣く有様は、青々とした山が、枯木の山のようになるまで泣き枯らし、川や海の水は、すっかり泣き乾してしまうほどであった。そのために、禍をおこす悪神のさわぐ声は、夏の蠅のように充満し、あらゆる悪霊の禍が一斉に発生した。
 そこで伊邪那岐大御神が、速須佐之男命に仰せられるには、「どういうわけで、あなたは私の委任した国を治めないで、泣きわめいているのです」と尋ねられた。これに答えて須佐之男命が申すには、「私は亡き母のいる根の堅洲国に参りたいと思うので、泣いているのです」と申しあげた。それで伊邪那岐大御神がひどく怒って、「それならば、あなたはこの国に住んではならない」と仰せられて、ただちに須佐之男命を追放してしまわれた。さてその伊邪那岐大神は、近江の多賀に鎮座しておられる。
 そこで須佐之男命が申すには、「それでは天照大御神に事情を申しあげてから、根の国に参りましょう」と言って天に上ってゆくとき、山や川がことごとく鳴動し、国土がすべて震動した。すると、天照大御神がその昔を聞いて驚き、仰せられるには、「私の弟君が上って来るわけは、きっと善良な心からではあるまい。私の国を奪おうと思って来るのに違いない」と仰せられて、ただちに御髪を解いて角髪に束ね、左右の角髪にも御鬘にも、左右の御手にも、みなたくさんの勾玉を貫き通した長い玉の緒を巻きつけ、背には千本も失のはいる靫を負い、脇腹には五百本も夫のはいる靫をつけ、また臂には威勢のよい高鳴りのする鞆をお着けになり、弓を振り立てて、堅い地面を股まで没するほど踏み込み、沫雪のように土を蹴散らかして、雄々しく勇ましい態度で待ちうけ、問いかけて「どういうわけで上って来たのか」 とお尋ねになった。
 そこで須佐之男命が答えて申すには、「私は邪心を抱いてはいません。ただ伊邪那岐大御神のお言葉で、私が泣きわめくわけをお尋ねになったので、私は亡き母のいる国に行きたいと思って泣いているのです、と申しました。ところが大御神が、おまえはこの国に住んではならない、と仰せられて、私を追放なさいました。それで、母の国に参ります事情を申しあげようと思って、参上しましただけです。謀叛の心など抱いてはおりません」と申した。

 (解説)
啼きいさちき: 「いさちる」は泣きわめくこと。
さ蝿如す: 「さ」は「さ苗」「さ月」の「さ」と同様に、神稲の意。田植えのころに群がる蝿のように。
妣(はは)の国:「妣」は亡き母の意で、イザナミノ命をさす。
神やらひ:神を追放すること。
なせの命:「なせ」は男性を親しんで呼ぷ語。
みすまるの珠:「みすまる」は、緒に通しつないだもの。
いつの高鞆:「いつ」は盛んな威力。「高鞆」は、高い音を発する鞆の意。「鞆」は弓を射るとき、左の腎に着ける武具で、弦があたって音を発した。

出雲系神話の祖神とされたスサノヲノ命は、もともと根の国と深い関係をもっていた。スサノヲノ命が、根の国に行きたがって泣いたというのは、元来この神が根の国を主宰する神であったからであろう。根の国は、海のかなたにあると考えられた異郷で、神々の故郷であり、また穀物や富の根源世界とも考えられた。
 しかし天照大御神と対立するスサノヲノ命は、荒ぶる神として描かれている。「青山は枯山如す泣き枯らし、…」には、水神としてのスサノヲノ命が泣くとき、海河の水がことごとく涙となって乾上がる様が、壮大な表現で語られている。この神が高天原に上るとき、山川が鳴動し、国土が震撼したというところにも、スサノヲノ命の荒ぶる神としての激しさが語られている。一方、この荒ぶる神を待ち受けて、天照大御神が武装して雄々しい姿を示す場面も、力強く荘重に描かれている。これらの神話に語られたスサノヲノ命は、暴風雨神であろうといわれている。出雲神話においては、農耕に慈みを与える水神としてのスサノヲノ命が、高天原神話では、暴風雨を思わせる荒ぶる神として描かれているのであって、スサノヲノ命の性格は複雑である。

古事記に、「さてその伊邪那岐大神は、近江の多賀に鎮座しておられる。」
と書かれている「多賀大社」
01130219taga.jpg


関東での伊邪那岐大神を祀っている代表的な神社を二つ挙げておきます。
まずは筑波山、男体山に伊邪那岐命を祀り、女体山に伊邪那美命を祀っています。
02130219tsukuba.jpg


奥秩父の三峰神社にも伊邪那岐命と伊邪那美命が祀られています。
03130219mitsu.jpg




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コメント

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四季歩さん、こんにちは

これも、私にとっては不思議な話です。だって、スサノオは禊ぎで目を洗った時に出てきたのですから、父親はいても母親はいない筈だと思うのですが。それが母親を慕って泣き叫ぶと言うのは、やはり、他の神話と合わせているのでしょうね。

後、根の国と黄泉の国の関係も、多分、2つの話が合わさったためにおかしなことになっているのだと思います。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
スサノオは出雲神話の神様というのは、話の流れからして
間違いないと思っています。
そして古事記は征服者大和朝廷の作った話ですから、
スサノオが、乱暴者と貶められたというのもうなづけます。
それでも、話の冒頭「天地のはじめのとき」から
出雲系の神が登場するのは、それだけ強大な出雲族の存在が
あったからだと、私も思います。
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Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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