本多政重の話「生きて候」/安部龍太郎

20130225

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少し前に「加賀百万石」という本で記事を書いたときにも書いたが、私の実家は金沢の隣町である。実家は無人にしているので、たまに帰っても寝るのはつらいので、金沢のホテルにいつも泊まっている。
金沢を歩いていると「本多」の名前がついているのに、よく出くわす。町の名前だったり記念館だったり。
これまでは、歴史については不勉強で、徳川家康の懐刀本多正信は知っていたが、加賀藩での本多は何なのかなあ、と思ったがそのままになってた。
本多正信の次男本多政重だということはわかったので、本多政重について知りたいと思い読んだのがこの本である。

家康の側近本多正信には二人の息子がいた。その次男、政重が主人公で、彼は7歳の時槍奉行倉橋長右衛門の養子になっていた。
親友のため、徳川秀忠の乳母の息子を斬り殺した政重は、父正信の助言で徳川家を出奔し、そのまま放浪の旅に出る。

慶長の役(朝鮮出兵)では前田利家の希望に沿い、朝鮮に渡って戦況を見聞。朝鮮の状況がどうなっているのか、石田三成らがまったく情報をくれないため、前田利家は困っていた。
前田家と政重の関係は、養父倉橋長右衛門が大阪出仕の際に同行していた時、前田利家に招かれ利家の次男利政に剣を教えた。それで豪姫とも知り合う。

朝鮮の悲惨な状況は、この本で読むのが初めてだった。まったく無益な戦を秀吉はやったものだ。
政重は石田三成と計って停戦に持ち込もうと努力する。
秀吉主催の醍醐の花見で、前田利政と共に警護に当たっていた政重のところに、石田三成が酒を注ぎにやって来た。
「近いうちにそれがしの屋敷に参られよ。朝鮮での戦いについて、いろいろと話を聞かせて頂きたい」
「あれは負け戦です」
秀吉に聞こえたら首が飛びそうなことを、政重はためらいもせずに言ってのけた。
ところが三成は顔色ひとつ変えず、
「それゆえ話を伺いたい。どうすればうまく矛を収められるか、知恵を貸していただきたいのでござる」
政重の肩にそっと手を置いて立ち去った。

朝鮮での戦況視察中、竹蔵という少年に出会い、弟子にする。
「倉橋さまのお役に立ちたかったんです。そしたら家来にしてもらえるんやないかと思いまして」
「私は家来など持たぬ」
「そんなら弟子でもいいです。俺に戦の仕方を教えてくんなはれ」
竹蔵がいきなり土下座をした。
途中から、これはひょっとして、と思い始めた。案の定、後の宮本武蔵のことだった。これはまったくのフィクションの部分であろう。

朝鮮で宇喜多秀家と縁の出来た政重は宇喜多秀家に仕えることになる。宇喜多家にあっては、関が原の合戦で、宇喜多軍主力として、徳川方井伊軍と真正面から戦っている。政重は、関ヶ原の合戦に敗れた後、敗軍の将、宇喜多秀家をかくまって貰うために、薩摩、島津家を訪れ、了解を取り付ける。併せて、徳川・島津両家の和議にも働く。
この本の力点は本多政重と宇喜多秀家との主従関係を軸に書かれていて、大谷吉継家仕官、福島正則家仕官には全く触れていない。上杉家に直江兼継の継嗣として迎えられることも、エピローグでさらりと触れているだけである。
前田家での家老としての事歴も、項目としてさらりと触れているだけだった。
この辺が私としては、最も知りたいところだったが。

最終的には、加賀100万石前田家の筆頭家老として、5万石という陪臣としては全国最高の禄高を得て、その家はそのまま幕末まで続くわけである。

迫力の合戦場面や政重の槍(やり)さばきなど、読みどころは多いが、やはり功利や時代に流されず生きた政重その人に最も感銘を受けた。

それから、エピソードとしてしか語られていないが、金沢御坊のことである。加賀一向一揆の本拠で織田信長に滅ぼされるまでは「仏の国」だった。
熱心な一向宗徒だった本多正信は徳川家康の録を離れ、金沢御坊に籠っていたが、いよいよ落城となったとき正信の妻は宗教に殉じて死に、正信は二人の子を連れて脱出、また家康に仕えたという。
政重の原点は金沢にあったということ。

この本を読み終わって、ますます本多政重のことをもっと知りたいという思いが強い。


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コメント

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四季歩さん、こんにちは

朝鮮出兵ですか。この手の話って、当初は良くても、その後、ゲリラ戦みたくなって、うまくいかないことが多いのですよね。現在でも同様なことが起こっても、結局、撤退したり、撤退せざるをえなくなってしまい、その後は思うとおりになりませんし。

また、この頃の朝鮮は明の支配下だったのか、明の軍隊とも戦わなければならないようでしたし。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
ほんとに、現在もアメリカから中東への派兵なんて、
ナンセンスきわまりないですね。

朝鮮出兵は、悲惨だったようです。

この本でも、明の軍隊が強いということになってましたね。
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とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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