古事記を知る(13)

20130226

3-2 二神の誓約生み
爾天照大御神詔。然者汝心之清明何以知。於是速須佐之男命。答白各宇気比而。生子。
自宇以下三字以音下効此
故爾各中置天安河而宇気布時。天照大御神先乞度建速須佐之男命所佩十拳劔。打折三段而。奴那登母母由良爾。此八字以音下効此振滌天之眞名井而。佐賀美爾迦美而。自佐下六字以音下効此於吹棄気吹之狭霧所成神御名。多紀理毘賣命。此神名以音亦御名謂奥津嶋比賣命。次市寸嶋上比賣命。亦御名謂狭依毘賣命。次多岐都比賣命三柱。此神名以音速須佐之男命。乞度天照大御神所纏左御美豆良八尺勾璁之五百津之美須痲流之珠而。奴那登母母由良爾。振滌天之眞名井而。佐賀美邇迦美而。於吹棄気吹之狭霧所成神御名。正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命。亦乞度所纏右御美豆良之珠而。佐賀美邇迦美而。於吹棄気吹之狭霧所成神御名。天之菩卑能命。自菩下三字以音亦乞度所纏御鬘之珠而。佐賀美邇迦美而。於吹棄気吹之狭霧所成神御名。天津日子根命。又乞度所纏左御手之珠而。佐賀美邇迦美而。於吹棄気吹之狭霧所成神御名。活津日子根命。亦乞度所纏右御手之珠而。佐賀美邇迦美而。於吹棄気吹之狭霧所成神御名。熊野久須毘命。併五柱。自久下三字以音
於是天照大御神告速須佐之男命。是後所生五柱男子者。物實因我物所成。故自吾子也。先所生之三柱女子者。物實因汝物所成。故乃汝子也。如此詔別也。
故其先所生之神。多紀理毘賣命者。坐胸形之奥津宮。次市寸嶋比賣命者。坐胸形之中津宮。次田寸津比賣命者。坐胸形之邉津宮。此三柱神者。胸形君等之以伊都久三前大神者也。
故此後所生五柱子之中 天之菩卑能命之子建比良鳥命。
此出雲國造。无邪志國造。上莬上國造。下莬上國造。伊自牟國造。津嶋縣直。遠江國造等之祖也。次天津日子根命。凡川内國造。額田部湯坐連。木國造。倭田中直。山代國造。馬来田國造。道尻岐閇國造。周芳國造。倭淹知造。高市縣主。蒲生稲寸。三枝部造等之祖也。

(読み)
 アマテラスオホミカミ シカラバミマシノココロノアカキコトハイカニシテシラマシトノリタマヒキ ココニハヤスサノヲノミコト オノモオノモウケヒテ ミコウマナトマヲシタマフ
 カレココニオノモオノモアメノヤスノカハヲナカニオキテ ウケフトキニ アマテラスオホミカミマヅタケハヤスサノホノミコトノミハカセルトツカノツルギヲコヒワタシテ ミキダニウチヲリテ ヌナトモモユラニ アメノマナイニフリススギテ サガミニカミテ フキウツルイブキノサギリニナリマセルカミノミナハ タキリビメノミコト マタノミナハオキツシマヒメノミコトトマヲス ツギニイチキシマヒメノミコト マタノミナハサヨリビメノミコトトマヲス ツギニタギツヒメノミコト ハヤスサノヲノミコト アマテラスオホミカミノヒダリノミミヅラニマカセルヤサカノマガタマノイホツノミスマルノタマヲコヒワタシテ ヌナトモモユラニ アメノマナイニフリススギテ サガミニカミテ フキウツルイブキノサギリニナリマセルカミノミナハ マサカアカツカチハヤビアメノオシホミミノミコト マタミギリノミミヅラニマカセルタマヲコヒワタシテ サガミニカミテ フキウツルイブキノサギリニナリマセルカミノミナハ アメノホヒノミコト マタミカヅラニマカセルタマヲコヒワタシテ サガミニカミテ フキウツルイブキノサギリニナリマセルカミノミナハ アマツヒコネノミコト マタヒダリノミテニマカセルタマヲコヒワタシテ サガミニカミテ フキウツルイブキノサギリニナリマセルカミノミナハ イクツヒコネノミコト マタミギリノミテニマカセルタマヲコヒワタシテ サガミニカミテ フキウツルイブキノサギリニナリマセルカミノミナハ クマノクスビノミコト
 ココニアマテラスオホミカミハヤスサノホノミコトニノリタマハク コノノチニアレマセルイツハシラノヒコミコハモノザネアガモノニヨリテナリマセリ カレオノヅカラアガミコナリ サキニアレマセルミバシラノミコハ モノザネミマシノモノニヨリテナリマセリ カレスナハチミマシノミコナリ カクノリタマヒキ
 カレソノサキニアレマセルカミ タキリビメノミコトハ ムナカタノオキツミヤニマス ツギニイチキシマノヒメノミコト ムナカタノナカツミヤニマス ツギニタギツヒメノミコトハ ムナカタノヘツミヤニマス コノミバシラノカミハ ムナカタノキミラガモチイツクミマヘノオホキミナリ
 カレコノノチニアレマセルイツハシラノミコノナカニ アメノホヒノミコトノミコタケヒラトリノミコト コハイズモノクニノミヤッコムザシノクニノミヤツコカミツウナカミノクニノミヤツコシモツウナカミノクニノミヤツコイジムノクニノミヤツコツシマノアガタノアタヘトホツアハミノクニノミヤツコラノオヤナリ ツギニアマツヒコネノミコトハ オフシカフチノクニノミヤツコヌカタベノユエノムラジウバラキノクニノミヤツコヤマトノタナカノアタヘヤマシロノクニノミヤツコウマゲタノクニノミヤツコミチノシリノクヘノクニノミヤツコスハフノクニノミヤツコヤマトノアムチノミヤツコタケチノアガタヌシカマフノイナキサキクサベノミヤツコラノオヤナリ

 (現代語訳)
 そこで天照大御神が仰せられるには、「それでは、あなたの心が潔白で邪心のないことは、どのようにして知るのですか」と仰せられた。これに答えて速須佐之男命は、「それぞれ誓約(うけひ)をして子を生みましょう」と申し上げた。こうして二神が天の安河を中にはさんで、それぞれ誓約をするとき、天照大御神がまず建速須佐之男命の帯びている十拳剣を受け取って、これを三つに折り、玉の緒がゆれて玉が音を立てながら、天の真名井の水に振り解いで、これを噛みに噛んで砕き、吐き出す息の霧から成り出でた神の御名は、多紀理毘賣命、またの御名は奥津嶋比賣命という。次に成り出でた神は市寸嶋比賣命、またの御名は狭依毘賣命という。次に成り出でた神は多岐都比賣命である。三柱
速須佐之男命が、天照大御神の左の角髪に巻いておられる、多くの勾玉を貫き通した長い玉の緒を受け取り、玉の緒がゆれて玉が音を立てるほど、天の真名井の水に振り濯いで、これを噛みに噛んで砕き、吐き出す息の霧から成り出でた神の御名は、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命である。また右の角髪に巻いておられる玉の緒を受け取って、これを噛みに噛んで砕き、吐き出す息の霧から成り出でた神の御名は、天之菩卑能命である。
 また御鬘(みかずら)に巻いておられる玉の緒を受け取って、噛みに噛んで吐き出す息の霧から成り出でた神の御名は、天津日子根命である。また左の御手に巻いておられる玉の緒を受け取って、噛みに噛んで吐き出す息の霧から成り出でた神の御名は、活津日子根命である。また右の御手に巻いておられる玉の緒を受け取って、噛みに噛んで吐き出す息の霧から成り出でた神の御名は、熊野久須毘命である。合わせて五柱の神である。
 そこで天照大御神が、速須佐之男命に仰せられるには、「この後で生まれた五柱の男の子は、私の物である玉を物実として成り出でた神である。だから当然私の子です。先に生まれた三柱の女の子は、あなたの物である剣を物実として成り出でた神である。だからつまりあなたの子です」 と、このように仰せられて区別なさった。
 そして、その先に生まれた神の多紀理毘賣命は、宗像神社の沖つ宮に鎮座されている。次に市寸嶋比賣命は、宗像神社の中つ宮に鎮座されている。次に多岐都比賣命は宗像神社の辺つ宮に鎮座されている。この三柱の神は、宗像君等があがめ祭っている三座の大神である。そして、この後で生まれた五柱の子の中で、天之菩卑能命の子の建比良鳥命、 これは出雲国造・武蔵国造・上莬上國造・下莬上國造・伊自牟國造・津嶋縣直・遠江國造等の祖神である。次に天津日子根命は、凡川内國造・額田部湯坐連・木國造・倭田中直・山代國造・馬来田國造・道尻岐閇國造・周芳國造・倭淹知造・高市縣主・蒲生稲寸・三枝部造等らの祖神である。

 (解説〉
乞ひ度して: 先方からもらい受けて。
ぬなと: 玉の音の意。
もゆらに: 玉が触れ合って鳴る様。
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命: 「正勝吾勝」は、正しく吾勝ちぬの意。「勝連日」は、速かに勝つ神霊の意。「忍穂」は多くの稲穂の意。書紀では、生まれる子が男子であれば、心の潔白な証拠としている。この神は皇室の祖神として、天孫降臨の段にも現われる。
天之菩卑能命: 「天穂日命」 とも記す。稲穂の神霊の意。出雲国造をはじめ、出霊系諸氏族の祖神。
物実: 神の生成するもとになる物。
胸形の奥つ宮: 福岡県宗像郡の宗像神社は、沖つ宮・中つ宮・辺つ宮の三社から成り、沖つ宮は玄界灘の孤島沖ノ島に祀られている。

 誓約の神話に侶、呪儀の神秘的な内容が、繰り返しの多い荘重な表現で語られている。この神話の主眼は、二神の誓約によって、剣と玉を物実として、三女神がスサノヲノ命の子として、五男神が天照大御神の子として、化生したと伝える点にある。三女神は宗像神社の祭神である。この神を祭った宗像君は、北九州を本拠として、日本海や朝鮮半島との海上交通に活躍した、海人系の豪族である。
タキリビメを祀る沖津宮(沖ノ島)からは、大陸からもたらされた古代の祭祀具が約12万点も見つかっており、その三分の一が国宝だそうである。
 一方、五男神のうちアメノホヒノ命は、出雲国造の祖神であり、アマツヒコネノ命は、凡川内國造や山代国造などの豪族の祖神である。そして皇祖神であるオシホミミノ命と、出雲国造の祖神であるアメノホヒノ命とが、兄弟の関係で結ばれていることは、天照大御神とスサノヲノ命とが、姉弟の関係で結ばれていることと同じ構想である。
『日本書紀』では、誓約に先立ってスサノヲノ命は、もし女が生まれたら邪心があるとせよ、男が生まれたら清き心であるとせよ、と言ったと記している。『古事記』にはこのことが記されていない。そして「日本書紀」と反対に、女が生まれたのでスサノヲノ命の心の潔白が証明された、としている。ところが「古事記」にも、アメノオシホミミノ命の神名には、「正勝吾勝勝速日」が添えてあるから、男子が生まれたので誓約に勝った、とするのが本来の伝承であったろうと考えられる。「古事記」に、なぜ女子の生まれたことを勝ちのしるしとしたのか、これは大きな問題である。あるいは「古事記」 の伝承は、女帝の持統天皇や元明天皇の時代に形成されたために、このように改変されたのではあるまいか、と考えられる。
また、稗田阿礼の女性説も、このような記述に力を得ている。

三姉妹の神は『宗像三女神』と呼ばれて、肥の国(福岡県)の宗像郡にある、沖の島・大島・宗像にそれぞれ祀られております。
とくに玄界灘に浮かぶ沖の島には古代の祭祀場である石座があ り、たくさんの宝物が出土し、海の正倉院と呼ばれています。
この島は今でも、神々と神主以外は誰も足を踏み入れることができない禁足地なので、いまだに神々しいご神気が島中に漂っているそうです。

宗像三女神の一柱で『古事記』では多紀理毘売命、『日本書紀』では田心姫(たごりひめ)・田霧姫と表記される。別名奥津島比売命(おきつしまひめ)だが、『日本書紀』第三の一書では市杵嶋姫(市寸島比売・いちきしまひめ)の別名としている。
神名の「タキリ」は海上の霧(きり)のこととも、「滾(たぎ)り」(水が激しく流れる)の意で天の安河の早瀬のこととも解釈される。日本書紀の「タゴリ」は「タギリ」が転じたものである。
この女神を単独で祀る神社は少なく、宗像三女神の一柱として各地の宗像神社・厳島神社などで、また、天照大神(あまてらす)と素戔嗚尊(須佐之男命・すさのを)の誓約で生まれた五男三女神とともに各地の八王子神社などで祀られている。

また、次女のいちきしま姫は『弁天さま』とも呼ばれて、宮島、江ノ島、琵琶湖の竹生島、吉野の奥の天河などに祀られている。

三女のタギツヒメを単独で祀る神社は少なく、宗像三女神の一柱として各地の宗像神社・厳島神社などで、また、アマテラスとスサノオの誓約で生まれた五男三女神とともに各地の八王子神社などで祀られている。


「古事記絵詞」から神々の誕生
121024ukei01.jpg

一番下にイザナキとイザナミの神生み、それで生まれた神が上方に向かって描かれていき、一番上がアマテラスとスサノオの「うけい」が描かれている。
両神の左方に三女神、右方に五男神が小さく描かれている。

八重垣神社の板絵「アマテラス(左)とイチキシマヒメ(右)」
121024ukei02.jpg


沖ノ島で奉仕する神官
121024ukei03.jpg



スポンサーサイト

コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

沖ノ島ですか。ここ、古くから信仰の対象になっていた島ですね。古田武彦氏はここを天国(あまこく)と比し、天照大神(あまてるおおかみ)が住んでいたとの説を出していたと思います。それにしても、ここにはものすごい数の遺物が残っており、今でもまだまだ、出てくるそうですから、すごい信仰の対象になっていた筈で、古田氏が天照大神が住んでいたとする説も十分に納得できると思っています。

弁天さまが祭られている「天川神社」、昨日(2/25)、TVで放映していた内田康夫原作のTVドラマ「天川伝説殺人事件」に出てきました。


matsumoさん

コメントありがとうございます。
沖ノ島はすごいところですね。
このあいだ、「鶴瓶の家族に乾杯」で宗像大社が出てきて、
そのとき宮司さんが話していました。
今でも神官以外は上がってはいけないそうです。

今年は巳年なので、弁天さまを祀っているところは、
取り上げられることが多くなると思います。
非公開コメント
プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード

Pagetop