古事記を知る(18)

20130621

4.大国主神
4-1 因幡の白兎
故此大國主神之兄弟八十神坐。自然皆國大國主神於大國主神。所以避者。其八十神各。有欲婚稲羽之八上比賣之心。共行稲羽時。於大穴牟遅神負帒。爲従者率往。於是至氣多之前時。裸菟伏也。爾八十神謂其菟云。汝将為者。浴此海鹽。當風吹而。伏高山尾上。故其菟従八十神之教而伏。爾其鹽隨乾。其身皮悉風見吹拆故。痛苦泣伏者。最後之來大穴牟遅神。見其菟言。何故汝泣伏。菟答言。僕在淤岐嶋。雖欲度此地。無度因故。欺海和邇
此二字以音下効比言。吾與汝競欲計族之多少。故汝者。隨其族在悉率來。自此嶋至于氣多之前。皆列伏度。爾吾踏其上走乍讀度。於是知與吾族孰多。見欺而列伏之時。吾踏其上読度來。今将下地時。吾云汝者我見欺言竟。即伏最端和邇捕我。悉剥我衣服。因此泣患者。先行八十神之命以。誨告浴海鹽當風伏。故爲如教者。我身悉傷。於是大穴牟遅神教告其菟。今急往此水門。以水洗汝身。即取其水門之蒲黄敷散布。輾轉其上者。汝身如本膚必差。其身如本也。此稲羽之素菟者也。於今者謂菟神也。故其菟白大穴牟遅神。此八十神者必不得八上比賣。雖負帒。汝命獲之。

(読み)
カレコノオホクニヌシノカミノミアニオトヤソカミマシキ シカレドモミナクニハオホクニヌシノカミニサリマツリキ サリマツリシユエハ ソノヤソガミオノモオノモ イナバノヤカミヒメヲヨバ〃ムノココロアリテ トモニイナバニユキケルトキニ オホナムヂノカミニフクロヲオホセ トモビトトシテヰテユキキ ココニケタノサキニイタルケメトキニ アカハダナルウサギフセリ ヤソガミソノウサギニイヒケラク イマシセムハ コノウシホヲアミ カゼノフクニアタリテ タカヤマノヲノヘニフシテヨトイフ カレソノウサギヤソガミノヲシフルママニシテフシキ ココニソノシホノカワクマニマニ ソノミノカハコトゴトニカゼニフキサカエシカラニ イタミテナキフセレバ イヤハテニキマセルオホナムヂノカミ ソノウサギヲミテ ナゾモイマシナキフセルトトヒタマフニ ウサギマヲサク アレオキノシマニアリテ コノクニニワタラマクホリツレドモ ワタラムヨシナカリシユエニ ウミノワニヲアザムキテイヒケラク アレトイマシトトモガラノオホキスクナキヲクラベテム カレイマシハ ソノトモガラノアリノコトゴトヰテキテ コノシマヨリケタノサキマデ ミナナミフシワタレ アレソノウヘヲフミテハシリツツヨミテワタラム ココニアガトモガラトイヅレオホキトイフコトヲシラム アザムカエテナミフセリシトキニ アレソノウヘヲフミテヨミワタリキテ イマツチニオリムトスルトキニ アレイマシハアレニアザムカエツトイヒヲハレバ スナハチイヤハシニフセルワニアヲトラヘテ コトゴトニアガキモノヲハギキ コレニヨリテナキウレヒシカバ サキダチテイデマシシヤソガミノミコトモチテ ウシホアミテカゼニアタリフセレトヲシヘタマヒキ カレヲシヘノゴトセシカバ アガミコトゴトニソコナハエツトマヲス ココニオホナムヂノカミソノウサギニヲシエタマハク イマトクコノミナトニユキテ ミヅモテナガミヲアラヒテ スナハチソノミナトノカマノハナヲトリテシキチラシテ ソノウエニコヒマロビテバ ナガミモトノハダノゴトカナラズイエナムモノゾトヲシエタマヒキ ソノミモトノゴトクニナリキ コレイナバノシロウサギトイフモノナリ イマニウサギガミトナモイフ カレソノウサギオホナムヂノカミニマヲサク コノヤソガミハカナラズヤカミヒメヲエタマハズ フクロヲオヒタマヘレドモ ナガミコトゾエタマヒナムトマヲシキ

 (現代語訳)
 さてこの大国主神の兄弟には、多くの神々が居られた。しかしみな、この国を大国主神にぉ譲り申しあげた。お譲りしたわけはつぎのとおりである。その大勢の神々は、みなそれぞれ因幡の八上比賣に求婚しようという下心があって、いっしょに因幡に出かけたときに、大穴牟遅神(大国主神)に袋を背負わせ、従者として連れて行った。ところが気多の岬にやって来たとき、丸裸になった兎が横たわっていた。これを見た大勢の神々が、その兎にいうには、「お前がその体を直すには、この潮水を浴びて、風の吹くのにあたって、高い山の頂に寝ておれ」と教えた。それでその兎は、神々の教えたとおりにして、山の上に寝ていた。
すると浴びた潮水が乾くにつれて、兎の体の皮膚が、すっかり風に吹かれてひび割れた。それで兎が痛み苦しんで、泣き伏していると、神々の最後について来た大穴牟遅神が、その兎を見て、「どういうわけで、お前は泣き伏しているのか」と尋ねると、兎が答えて申すには、「私は隠岐島にいて、ここに渡りたいと思いましたが、渡る方法がなかったので、海にいるワニをだまして、『わたしとお前とくらペて、どちらが同族が多いかを数えてみたい。それでお前はその同族を、ありったけ全部連れて来て、この島から気多の岬まで、みな一列に並んで伏しておれ。そうしたら、私がその上を踏んで、走りながら数えて渡ることにしよう。こうして私の同族とどちらが多いかを知ることにしよう』と、こういいました。
 そして、ワニがだまされて並んで伏しているとき、私はその上を踏んで、数えながら渡って来て、今や地上に下りようとするとき、私が『お前は私にだまされたのだよ』と言い終わるやいなや、一番端に伏していたワニが私を捕えて、私の着物をすっかり剥ぎ取りました。そのために泣き悲しんでいたところ、先に行った大勢の神々がいわれるには、『潮水を浴びて、風にあたって寝ておれ』とお教えになりました。それで教えのとおりにしましたら、私の体は全身傷だらけになりました」と申しあげた。
 そこで大穴牟遅神は、その兎に教えて仰せられるには、「今すぐにこの河口に行って、真水でお前の体を洗って、ただちにその河口の蒲の花粉を取ってまき散らし、その上に寝ころがれば、お前の体はもとの膚のようにきっと直るだろう」と仰せられた。それで教えのとおりにしたところ、兎の体は元どおりになった。これが因幡の白兎である。今もこの兎を兎神といっている。そこでその兎は、大穴牟遅神に、「あの大勢の神々は、きっと八上比賣を娶ることはできないでしょう。袋を背負ってはいるが、あなた様が娶られるでしょう」と申しあげた。

(解脱〉
「稲羽」は因幡国で、鳥取県東部の古名。「八上比売」は因幡国八上郡の地名による女神の名。「気多の前」は因幡国気多郡の海浜。今、鳥取市西北の白兎海岸に、気多岬や白兎神社などの伝説地がある。
白兎海岸
沖合に見えるのが、白兎が住んでいたという淤岐嶋。見る角度によって島の形が大きな兎が横たわっているように見える。
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白兎神社
参道にはいくつもの兎の石像が置かれている。
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「和邇」南方の説話では、淡水に棲む鰐(クロコダイル)であるが、わが国では「海の和邇」「鰐魚」と記されている。これはワニザメのことで、鮫や鱶をワニと呼んだ。「水門」は川が海に注ぐ川口をいう。「蒲黄(かまのはな)」は蒲の穂の黄色い花粉をいう。古代では、止血、鎮痛にきく草薬として用いられた。

知恵のある陸の動物が、愚かな水中の動物をだまし、川を渡ることに成功するという筋の話は、インドネシアや東インド諸島にもあるそうです。インドネシアの話は、洪水のため州を渡ることができなくなった鼠鹿(ねずみじか)が、鰐をだまして呼び集め、その背を踏んで川を渡り、愚かな鰐を嘲ける、という筋である。因幡の白兎の説話も、竹の中に棲んでいた兎が、洪水のために、竹の根に乗ったまま、隠岐島に漂着したので、元の地に帰ろうとしてワニをだました、という筋であったらしい。兎とワニの話が、インドネシア方面から伝わってきた動物説話であることは、明らかである。
 大穴牟遅神は、民間で医療の神として信仰されていたので、白兎の話にこの神を登場させて、大穴牟遅神が医療の神であることを語ったのである。未開社会では、医療を施す能力のある者は、民衆からとくに尊敬されたのである。呪医が酋長なり、さらに王者となることは、土人社会では珍しくなかったという。
 この段から「根の国訪問」の段にかけて、大穴牟遅神が大国主神にまで成長する過程が語られている。大穴牟遅神が医療の神であったことは、大国主神となるための資格として、必要であったのである。
 なお大穴牟遅神と八十神とが、八上比売に求婚に出かけるというのは、妻争い説話の形式によったものである。兎の予言を待つまでもなく、意地の悪い冷酷な八十神に対して、大穴牟遅神は慈愛に富んだ、妻争いの勝利者となるにふさわしい神として描かれている。

大国主神の若い頃の名「大穴牟遅神」は、日本書紀では「大己貴命」と表記されている。
神田明神や、ついこの間訪ねた日光二荒山神社の祭神は「大己貴命」となっている。

神田明神
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日光二荒山神社
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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

有名な話ですが、この悪い兄神達は、どこかに祭られているのかなあといつも、疑問に思っています、一応、神様なので、祭られているような気もするのですが。

一方、ウサギの方は、サメに皮を剥がれた上、ようやく、大国主に助けてもらう訳ですが、白兎神社で神様になっていると言うのは、すごく不思議な感じがします。単に大国主の将来のことを予言したに過ぎませんし、霊力があるとは思えないのですが。

matsumo さん

コメントありがとうございます。
まてよ、と思い「八十神」について調べてみましたが、
まったくわかりませんね。
まあ、古事記にも名前たく正体は不明の神様が
いますからね。

調べてみると、白菟神は、皮膚病に霊験のある神として、
また、大国主と八上姫神との婚姻を取り持ったことから
特定の人との縁結びの神としてかなわぬ恋をかなえ、
特定の人との親交をより深めると信仰される。
さらに、遠国の人もこの兎に願えば早く国に帰れるという。
また医療の神でもある。

ということでした。
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Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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