『居眠り磐音 江戸双紙』第31巻「更衣ノ鷹(上)」&第32巻「更衣ノ鷹(下)」/佐伯泰英

20130628

第31巻「更衣ノ鷹(上)」

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この巻での大きな出来事は、武者修行に出ている松平辰平は、熊本から博多に出てきた。磐音も立ち寄った有地内蔵助の道場で修業をすることになる。

西ノ丸家基に対する田沼意次の攻撃が次第に厳しくなる。気になるのは西ノ丸御医師の一団から桂川甫周が外され、代わって法眼千賀道隆が入った。調べてみると田沼意次の息がかかった人物。じわりじわりと外堀が埋められていく。
ついに磐音も家基の剣術指南役を解かれる。

家基が鷹狩を行うので、佐々木玲圓と磐音は陰ながら警護をする。
鷹場について詳しい説明があった。
家光のときに江戸から五里四方を将軍の家鷹場、さらに十里の間を御三家の鷹場とした。綱吉のときに一旦廃され、吉宗の代に再び復活し、葛西、岩淵、戸田、中野、六郷が新たに加えられた。
鷹場付近に、小菅御殿、御殿山、靑戸御殿、中山御立場(中野)、東金御成り街道のお茶屋御殿、中山道の鴻巣御殿、白金御殿が整備され、のちに地名として残る。
よく利用されたのが「目黒筋」で、目黒村を中心に駒場原、碑文谷原、広尾原などである。

鷹狩の最中、家基は四人組の鉄砲に狙われるが、磐音と弥助、霧子らで守り通す。

おこんが桂川甫周からの使いと謀られ、出かけたところを田沼意次の愛妾の行列にかどわかされる。
矢場女だったおすなが若いころの田沼意次に見初められて妾になり、いまは裏の仕事をこなしている悪女である。
その隠れ家に乗り込む磐音と弥助、霧子。

この巻で磐音が相対したのは、武州陣甲流、独創二天一流、その他は特に流派の説明なし。


第32巻「更衣ノ鷹(下)」

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この巻では、いよいよ田沼意次の用人が佐々木道場に押しかけてきたのを皮切りに、西ノ丸家基を亡き者にしようとする田沼意次の手があからさまになってくる。
いままで佐々木道場の後ろ盾となっていた、将軍御傍御用取次の速水左近も四面楚歌の状態となり、西ノ丸家基の周囲に田沼意次の手の者があてられる人事がどんどん推し進められる。

磐音は、おこんの父親金兵衛から、「あんたは純真無垢で、戦い方を知らない」と云われ、吉原会所の四郎兵衛に会いに行く。
四郎兵衛は、田沼意次の凄さを語る。
「宝暦四年(1754)より、美濃郡上藩金森家三万八千石に一揆が起こりました。藩の財政窮乏を打開せんと、年貢の取り方を定免制から検見取へと強引にも改めようとしたのです。年貢が重くなることを恐れた領民らは藩に強訴しましたが、受け入れられず、江戸に出て老中に駕寵訴をなし、目安箱に訴状を投げ入れることを繰り返しました。さらには美濃郡上津の預かり地、越前の白山中居神社でも神職たちの石徹白騒動が起こり、大騒動に発展したのでございます。何年にもわたる美濃郡上騒動です。
時の将軍家重様は、あまりの大騒動に、幕府の要職の者が絡んでいなければ、かような騒ぎになるまいと『お疑い』を示され、幕府では宝暦八年(1758)七月二十日に評定所で五手掛の審理をすることになりました」
 五手掛とは、幕府で最高の審理体制であり、老中の指揮のもと、寺社奉行、町奉行、勘定奉行、大目付、目付の五役が担当した。
「御用取次の田沼意次様は、御庭番を美濃郡上に飛ばしてことの真相せ探らせ、家重様お疑いのように幕閣の者が関係している事実を探り出されて、『風聞書』にまとめて提出なされた。この結果、家重様より遠慮会釈なく吟味即断せよとのお墨付きを得て、九月三日の五手掛の場に出座なされたのでございます。老中でもない田沼意次様は、家重様代理の役で異例にも出座された上に、この場を仕切られた。その結末は悲惨にして過酷なものでした。老中本多正珍様は罷免逼塞、若年寄本多忠央様は改易、大目付曲淵英元様ほ罷免の上、無役の小普請入り、さらに閉門、勘定奉行大橋義親様は改易、陸奥相馬藩へのお預け、美濃郡上藩三万八千石金森頼錦様は改易の上、陸奥盛岡藩にお預け、金森家は断絶しております。この五手掛の出座した老中、若年寄の重職ともども、稀にみる厳しい処罰を行い、見事に処断したのが、四十歳の御用取次田沼意次様なのでございますよ」
四郎兵衛が、「ふうっ」 と大きな息を吐いた。

「ただ今の幕府にこれほど肝が据わった人物はおられませぬ。そのことを幕府、世間も忘れ、城中で閏閥に走った結果、田沼様が隠然たる力を持たれたが如く評するのは、間違いにございます。佐々木様、田沼様の上に老中首座松平武元様ら先任の老中がおいでですが、残念ながら田沼様ほどの切れ味はございませぬ。誤解されることを恐れず申し上げますと、松平様方は田沼様に華丸をぎゅっと掴まれて身動きできない、それが実情にございますよ」
「家基様の将軍就位は田沼意次様の一存にかかっていると言われますか、四郎兵衛どの」
「家基様は、田沼意次様を受け入れるには明敏清廉にして正直すぎます。暗愚を装い、田沼意次様にすり寄ることこそ、家基様の十一代様へのただ一つの道」
「家基様にできましょうか」
「さもなくば、田沼意次様自らと一族の保身のために、家基様の暗殺を果たすまで手を緩めますまい」
と四郎兵衛が言い切った。

この巻で磐音が相対したのは、神道一心流、古流、尾張柳生新陰流、タイ捨流、その他は特に流派の説明なし。


この巻で、磐音にとって大暗転を迎え、そのショックで半月以上記事にできずにおりました。
しかし「居眠り磐音」はまだまだ十巻以上も続いていくこと故、いつまでも放っておけず、先に進むためにようよう記事としました。
憎さも憎し、田沼意次。


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

この辺り、主人公に対してあまりに陰湿なので、読んでいない巻です。なるほど、その言うことになったのですか。

鷹狩りと言えば、正月の2・3日だったか、毎年、「浜離宮恩賜庭園」にて、鷹匠が実際に鷹を放つのを行いますね。結構な見もののようです。以前に、私の家の近所で、鷹を腕に留まらせて歩いている人を何回か見たことがあり、写真もOKだったことを思い出しました。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
そうなんですよね。
全巻読み通すと決めていたので、無理やり
読みましたが、ちょっと落ち込みました(笑)

正月の鷹匠のイベントは、今年知りまして、
来年は行こうと楽しみにしてます。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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