海賊とよばれた男/百田尚樹

20130712

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2013年本屋大賞第1位ということで、読んでみたのだが、これには驚いた。のっけから、主人公の人柄にウルウルしたり、サムライぶりに爽快な気分を味わったり。
本屋大賞、すごいですね。伊達ではない。

小説ということで、石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造となっていますが、出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしていて、書いてあることはノンフィクションです。

敗戦当時、海外の営業所が62店、国内はわずか8店。これは既存の大商社や官僚に頼り、支配されるのを嫌って独立独歩で業界の中で生き抜こうとした結果の姿だった。
社員のほとんどは外地に居て、これから引き揚げてくる。

「ならん、ひとりの馘首もならん!」--異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。そのうえ大手石油会社から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも解雇せず、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぎながら、逞しく再生していく
「旧海軍の残油浚い」とは、どういう話かというと、そもそも太平洋戦争に日本が突入していったのは、アメリカから石油を完全に止められてしまったから。石油(灯油、ガソリン、潤滑油)が無ければ、産業も生活も成り立たない。苦し紛れの日本は東南アジアの米英の油田を奪って、米英との戦争に突入していく。

しかし、十分な石油を手に入れられなかった日本の敗戦は決定的でしたね。
私は初めて知ったのですが、あの戦艦「大和」は一度も出撃していないんですね。なにしろ大和が一日出撃すれば、他の戦艦6、70隻分の油を食ってしまうからなんだそうです。
戦える油が無かったんですね。

日本を占領したGHQは、石油の輸入を認めなかった。懲らしめと嫌がらせだろう。
そして、まずは旧海軍のタンクに残っている油を使えと言うのだ。油が無くて困っている海軍が使えなくて残した、タンクの底の汚泥まみれの滓である。人手でバケツで汲み出すしかない。ガスが溜まっていて酸欠状態である。
他の石油会社は、そんなの不可能だと、どこもやろうとしなかった。
国岡鐵造は、国のためならやってやる、と引き受ける。
国岡商店の社員は、それまでホワイトカラーだった青白い体の者も、フンドシ一つになってタンクの底で掻きだす作業を必死にやった。

日本各地で、展開されたその死闘を目撃した、金融界の、官僚の、骨のある人物が、業界で目の敵にされ、孤立無援の戦いをする国岡商店を助ける。
国岡商店(=出光)は、中の敵と外の敵と、両方戦っている。外は英米石油会社、いわゆるメジャー。占領期中から、まずは賠償資産として石油精製施設を取り上げようとして、脅しをかけておいてメジャーと組まないと石油が手に入らないように工作する。石油輸入のための外貨割り当てに規制をかけ、さらにはメジャーと提携していない会社には、メジャーからの石油は買えないようにする。
内側の敵は日本の同業者と日本政府。同業者は、市場に粗悪品ばかりを作っては流し、消費者のための石油を掲げて、一人民族経営を貫こうとしている出光を眼の敵にする。政府に働きかけて出光を石油統制機構から締め出そうとしてみたり、何だかんだいって邪魔をする。また、政府は日本の石油政策がないから、メジャーに支配されない石油会社の重要性をなかなか理解しようとしない。
それでも、出光は生き残る。偏に消費者側のサポートと、人を大事にする経営哲学のおかげだろう。自動車会社協会や陸運協会、船会社協会など、消費者、業界団体は出光のサポートに回る。
なにしろ、出光がアメリカの弱小石油会社とか中南米とかから、やっと手に入れて販売を始めると、車を運転する人が皆ビックリしたといいます。それまでメジャーとそれに牛耳られている他の石油会社のガソリンは粗悪なものを日本に押し付けていて、出光のガソリンだと車の走りが全然違ったそうです。

また、出光の合理的な経営にバンクアメリカン(当時世界最大の銀行)が出光の資本を上回る資金貸与を行ったり、一部の心ある官僚たちがGHQからの圧力に屈しなかったりして助ける。

そして「日昇丸事件」です。
イランがイギリスの会社、現BP(当時AI)から石油採掘権を取り上げ、国有化しました。イランの石油の金が全くイランに入らなかったからです。
イギリスは一部軍事介入を行ったが、本格的にすれば他の植民地の独立運動に火をつけかねないから、経済制裁の形をとった。
で、AIがイランから石油を買うな、と警告を発したために、他の石油会社は、どこも引取りに来ない。
一方、アメリカの石油会社はイラン市場に入り込みたくて仕方がないので、アメリカ政府は、表向きイランの石油国有化を支持。イギリスとアメリカは裏で交渉しイラン石油を独占しようということで合意。
イランは石油が売れなければ経済が逼迫する。アメリカのコンサルタントを経由で出光に話が来ました。
出光も国内で、業界・官僚から村八分にされて四面楚歌でしたから、これを買う決断をします。
その油を買う金も、当時は自由化になっていないから、「外貨割り当て」制です。官僚の許可が必要。
この時に、金融界でも官僚からも応援する人が出てきます。
あの「旧海軍の残油浚い」を目撃し、感動した人たちです。

出光の自社タンカー「日章丸」は、イギリス海軍の封鎖網のなか、見事にイランのアバダンに到着します。
この辺の話は、まさに冒険譚であり、読んでいてわくわく快哉。とても面白かった。

アバダンに無事日章丸が入ったことを確認してから、出光の店主は日章丸を送ったことを発表した。これには、国内外みなびっくり。
当然日本領海に入った瞬間にAIは横浜地裁にイランから積んだ石油はAIのものだ、返せと訴えたわけです。
国際法の権威、東大のセンセイは、出光は裁判に負けるだろうと云ったものである。
しかし、出光を応援する人たちは、優秀な国際法弁護士を見つけてくれるんですね。
彼は、差し押さえ仮処分がされないように、土曜日に日章丸が入港するようにして、裁判のテクニックでその日に仮処分が下されないようにした。

AIは東京地裁にもっていって戦ったが、やはり結果は一緒でここで訴訟取り下げという形で事実上敗北宣言した。


後日談ですが、メジャーはほんとにひどいですね。日本側がだめなら、イラン側をつぶせ、ということでCIAがパーレビ国王をそそのかして国有化を推進していた首相を追い出し、クーデターが起きる。即行アメリカが承認し、経済援助をガバガバ。
イラン側の国有化を事実上骨抜きにし、イランが自由に使える石油をたったの12%に制限してしまった。

アメリカという国は、本当に怖いですね。

現在の窒息状態のような、この日本に再び出光さんのようなサムライが出現することを祈ってやみません。


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

この本、秋葉原のヨドバシカメラのビルの7Fの本屋さんに大量に置いてあったので、名前だけは知っていましたが、手にはとりませんでした。と言うことで、どのような本だったのか、初めて知りました。なるほど、出光興産に関する本でしたか。

先日、米国のマグドナルドや精肉業界に関する本を読みましたが、米国では日本と比較にならない位、議員と大企業が結びついているようで、彼らは議員に自分たちが有利となるように法律を改正させるのだそうです。ですから、例えば、ナグドナルドの店の従業員に対する最低賃金は今までの2割引で良いとの法律まで作らせたのだそうです。

No title

お久しぶりです。
この本、読みたいと思っているのですが、百田尚樹氏の「永遠の0」と同じように文庫本になるのではと思い、買い控えています。「錨を上げよ」も読んでみたいんですよ。でも、なかなか文庫になりませんTT
もう単行本を買ってしまおうかな。

No title

こんばんは。
タイトルに惹かれました^^
出光をテーマにするって面白そうですね。
冒頭だけ読ませていただいて、あとは読みませんでした。
これは買いです。
買ってから続きよみます^^
いい本紹介していただきました。ありがとうございます。

コメントありがとうございます

matsumoさん
この本、本や大賞を取ったので、どこの書店でも
たくさん置いてあると思います。
アメリカは、そういう事はあからさまにやりますよね。
日本は、もっと手の込んだ、裏工作が多いようです。

kurtさん
私は、逆に百田尚樹氏の本、これが初めてでしたね。
最近歴史関係の本を、いろいろと買いこんでしまい、
その他の本は、思うように買えません(泣)

薄荷脳70 さん
私の記事が参考になったら、とても嬉しいです。
いつも、私のほうが教わってばかりですから。
この本、すごかったです。

ひさびさですが

半年ほど以前、つまり本屋大賞を受賞する前に、私はこの作品をNHKラジオ第二の朗読番組で「読ませていただき」ました。朗読は俳優の橋爪功さん。それはそれは見事な朗読でした。これが最近、再放送しているようです。第1回~第5回は20日に放送されたのですが、今度の土曜日(27日)、夜10:25~11:40に、第6回~第10回が再放送されます。本をお読みになった方も一聴の価値ありと思います。

ゆうさん

コメントありがとうございます。
貴重な情報ありがとうございます。
橋爪功さんの朗読、想像するだに
よさそうですね。
土曜の夜、楽しみにします。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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