古事記を知る(19)

20130718

4-2 八十神の迫害
 於是八上比賣答八十神言。吾者不聞汝等之言。将嫁大穴牟遅神。故爾八十神怒。欲殺大穴牟遅神共議而。至伯伎國之手間山本云。赤猪在此山。故和禮
此二字以音共追下者。汝待取。若不待取者。必将殺汝云而。以火焼似猪大石而。轉落。爾追下。取時。即於其石所焼著而。爾其御祖命哭患而。参上于天。請神産巣日之命時。乃遣螱貝比賣與蛤貝比賣。令作活。爾螱貝比賣岐佐宜此三字以音集而。蛤貝比賣持水而。塗母乳汁者。成麗壮夫訓壮夫云袁等古而出遊行。
 於是八十神見。且欺率入山而。切伏大樹。茹矢打立其木。令入其中。即打離其冰目矢而拷殺也。爾亦其御祖命哭乍求者。得見。即拆其木而。取出活。告其子言。汝有此間者。遂爲八十神所滅。乃速遣於木國之大屋毘古神之御所。爾八十神覓追臻而。矢刺之時。自木俣漏逃而去。御祖命告子云。可参向須佐能男命所坐之根堅洲國。必其大神議也。


(読み)
ココニヤカミヒメヤソガミニコタヘケラク アハミマシタチノコトハキカジ オホナムヂノカミニアハナトイフ カレココニヤソガミイカリテ オホナムヂノカミヲコロサムトアヒタバカリテ ハハキノクニノテマノヤマモトニイタリテイヒケルハ コノヤマニアカヰアルナリ カレワレドモオヒクダリナバ イマシマチトレ モシマチトラズハ カナラズイマシヲコロサムトイヒテ ヰニニタルオホイシヲヒモテヤキテ マロバシオトシキ カレオヒクダリ トルトキニ ソノイシニヤキツカエテミウセタマヒキ ココニソノミオヤノミコトナキウレヒテ アメニマヰノボリテ カミムスヒノミコトニマヲシタマフトキニ スナハチキサガイヒメトウムギヒメトヲオコセテ ツクリイカサシメタマフ カレキサガヒヒメキサゲコガシテ ウムギヒメミズヲモチテ オモノチシルトヌリシカバ ウルハシキヲトコニナリテイデアルキキ
ココニヤソガミミテ マタアザムキテヤマニヰテイリテ オホギヲキリフセ ヤヲハメソノキニウチタテ ソノナカニイラシメテ スナハチソノヒメヤヲウチハナチテウチコロシキ カレマタソノミオヤノミコトナキツツマゲバ ミエテ スナハチソノキヲサキテ トリイデイカシテ ソノミコニノリタマハク イマシココニアラバ ツイニヤソガミニホロボササエナムトノリタマヒテ スナハチキノクニノオホヤビコノカミノミモトニイソガシヤリタマヒキ カレヤソガミマギオヒイタリテ ヤサストキニ キノマタヨリクキノガレテサリタマヒキ ミオヤノミコトミコニノリタマハク スサノヲノミコトノマシマスネノカタスクニニマイデテヨ カナラズソノオホカミタバカリタマヒナムトノリタマフ

 (現代語訳)
そこで八上比売は八十神たちに答えて、「私はあなた方の言うことは聞きません。大穴牟遅神と結婚します」といった。それでこれを聞いた八十神たちは怒って、大穴牟遅神を殺そうと思い、みなで相談して、伯著国の手間の山のふもとにやって来ていうには、「赤い猪がこの山にいる。われわれがいっせいに追いおろしたら、お前は下で待ち受けて捕えなさい。もし待ち受けて捕えなかったら、かならずお前を殺すぞ」といって、猪に似た大石を火で焼いてころがし落とした。そこで追いおろすのを捕えようとして、大穴牟遅神はたちまちその焼け石に焼きつかれて、死んでしまわれた。このことを知って、御母神が泣き悲しんで高天原に上って、神産巣日命に救いを請うたとき、ただちに螱貝比売(キサガヒヒメ)と蛤貝比売(ウムギヒメ)とを遣わして、治療して蘇生させられた。そのとき螱貝比売は貝殻を削って粉を集め、蛤貝比売はこれを待ち受けて、蛤の汁で溶いた母の乳汁を塗ったところ、大穴牟遅神はりっばな男子となって元気に出て歩かれた。
 ところが八十神たちはこれを見て、また大穴牟遅神をだまして山に連れ込み、大木を切り倒し、楔をその木に打ち立て、その割れ目の間にはいらせるやいなや、その楔を引き抜いて打ち殺してしまった。そこでまた、御母神が泣きながら大穴牟遅神を捜したところ、見出すことができて、ただちにその木を裂いて取り出して復活させ、わが子大穴牟遅神に告げて、「あなたはここにいたら、ついには八十神たちによって滅されてしまうだろう」と言って、すぐに紀伊国の大屋毘古神のもとに、方向を変えてお遣わしになった。ところが八十神たちが探し求めて追いかけて釆て、弓に矢をつがえて大穴牟遅神を引き渡せと求めたとき、木の股をくぐつて大穴牟遅神を逃がして、大屋毘古神は、「須佐能男命のおられる根の堅州国に向っていらっしゃい。きっとその大神がよいように考えて下さるでしょう」と仰せられた。

 (注)
○手間の山 鳥取県西伯郡会見町の西、島根県との境の山。(米子市の南方) 
○御祖の命 母親の神をさす。刺国若比賣である。 
○神産巣日命 出雲系の生成をつかさどる神。 
○螱貝比賣 「螱貝」は赤貝の古名。赤貝を擬人化した女神。「出雲風土記」に見える「支佐加(きさか)比売命]と同神であるという。 
○蛤貝比賣 「蛤貝」は蛤の古名。蛤を擬人化した女神。「出雲風土記」の「宇武賀(うむが)比売命」と同神であろうという。
○母の乳汁を 赤貝の殻をけずった粉を、蛤の汁で溶いたものを、母の乳汁として塗るのであろう。火傷に対する療法であろう。 
○茹矢 大木を割るとき、割れ目に打ち込む楔のこと。 
○木国 紀伊国(和歌山県)。 
○大屋毘古神 家屋の神。(前出)書紀にスサノヲノ命の子と伝える五十猛命と同神であろうという。 
○根の堅州国 地の底にあるとされた異郷。 スサノヲノ命の主宰する世界と考えられていた。

 (解脱)
 オホナムヂノ神が八十神に迫害され、二度までも殺される物語は、妻争いの悲劇として語られている。赤猪を追い下すのを、山の下で待ち受けて捕えよという話には、古代の狩猟生活が反映しており、大木の割れ目にはいらせてはさみ殺す話には、古代の山林伐採や製材の作業が反映している。キサガヒヒメとウムギヒメとが、オホナムヂノ神の火傷を治療して蘇生復活させる話は、オホナムヂノ神自身が、医療の神として信仰されたことからきている。
 オホナムヂノ神が紀伊国に遣わされるのは、スサノヲノ命の支配する根の堅州国へ向うためであって、紀伊国が根の国に直結する国、または根の国であるとする思想があったことを示唆している。
 さてオホナムヂノ神が、八十神の迫害に屈することなく、死の苦難を克服して、たくましく蘇生復活する物語には、古代の未開社会で行なわれた成年式儀礼(Initiation)としての、死と復活の儀礼が反映していると見ることができる。こうしてオホナムヂノ神は、偉大な王者としての大国主神へと、成長をとげる。

「大穴牟遅命」 青木繁
130718oonamuji.jpg



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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

この話って、不思議なことに、母神は全く子供達の八十神に対して、全く何も言わずに、大穴牟遅神を再生させるだけなのですよね。普通だったら、「いじめるな」と言うと思うのですが。

そう言えば、「おわら」の女性達の黒い帯ですが、おわらの関係者によると、あれは各家に必ずあったことから、と言うことなのだそうです。

matsumo さん

コメントありがとうございます。
いろいろとおかしいところはありますよね。
これは説話だと思っています。
神様が二回も死んで、しかも生き返るという(笑)

おわらの女衆の帯の話、ありがとうございました。
たしかに、江戸時代の農民ですから、喪服くらいしか
無かった家もたくさんあったでしょうね。
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Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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