チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35

20130727

1877年、メック夫人から毎年年金を贈られることになったチャイコフスキーは、ジュネーヴ湖畔のクラランに静養に出かけ、ここを拠点にイタリアへも足を延ばして風光明媚な南国の風物に親しんだりした。そのおかげで、この時期、創作意欲が旺盛になり、交響曲第4番や歌劇『エフゲニー・オネーギン』を完成するなどした。翌1878年4月、友人でヴァイオリニストのイオシフ・コテックが、3年前にパブロ・デ・サラサーテが初演して大成功を収めたエドゥアール・ラロのヴァイオリン協奏曲第2番《スペイン交響曲》(Symphonie espagnole )ニ短調作品21の譜面を携えてクラランのチャイコフスキーの許を訪ねてきた。チャイコフスキーは早速この『スペイン交響曲』を研究し、その研究の成果物として本作は着想されたようである。コテックのクララン滞在中の1ヶ月ほどの間に、本作は集中的に書き上げられた。

チャイコフスキーは完成した楽譜を早速メック夫人に送ったが、夫人から賞賛の声を聞くことはできなかった。次いで彼は楽譜を、当時ロシアで最も偉大なヴァイオリニストとされていたペテルブルク音楽院教授レオポルト・アウアーに送ったが、アウアーは楽譜を読むと演奏不可能として初演を拒絶した。

結局初演は、後に、ライプツィヒ音楽院教授となったロシア人ヴァイオリニストのアドルフ・ブロツキーの独奏、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、1881年12月4日に行われた。
しかし、指揮者も楽団員も作品を好まず、全くの無理解のうちに演奏を行ったため、その演奏はひどい有様であったという。このため聴衆も批評家もこの作品をひどく批判した。特に、エドゥアルト・ハンスリックはその豊かな民族色に辟易し『悪臭を放つ音楽』とまで言い切った。

しかし、ブロツキーは酷評にひるむことなく、様々な機会にこの作品を採り上げ、しだいにこの作品の真価が理解されるようになった。初演を拒絶したアウアーも後にはこの作品を演奏するようになり、弟子のエフレム・ジンバリスト、ヤッシャ・ハイフェッツ、ミッシャ・エルマンなどにこの作品を教え、彼らが名演奏を繰り広げることで、4大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれるまでに評価が高まったのである。

今ではベートーヴェン、メンデルスゾーンと並ぶ“3大ヴァイオリン協奏曲”のひとつとして愛されているのはご存知の通りです。

それから、テレビドラマ『のだめカンタービレ』の特別編で、千秋真一が『プラティ二国際指揮者コンクール』の本選の課題曲として指揮しますが、ここは、指揮者とオケの関係をドラマにしていて、とても面白かった。

この曲は、ずいぶんと集まっていますね。

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ヴァイオリン:ディビッド・オイストラフ
指揮:フランツ・コンビッチュニー
管弦楽:ドレスデン・ザクセン・シュターツカペレ
録音:1954年2月 ドレスデン
DG111周年セットに収容
オイストラフの演奏は、鋭く速いテンポで音を刻む男性的力強さがあるかと思えば、甘くゆっくりしたテンポで音を刻む箇所もある。オイストラフの演奏からは、この曲が、単なる名旋律の連続ではなく、物語として聞かせてくれる。
録音された年によれば、オイストラフがちょうど油が乗り切ったところか。録音が古いことを割り引けば、彼の演奏はさすが。ただ、オケの音がイマイチ。もしかしたら録音のフォーカスがオイストラフに当たっていたのだろう。
第一楽章のクライマックスでも、全然唄っていないのは、残念。


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ヴァイオリン:五嶋みどり
指揮:クラウディオ・アバド
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管絃楽団
1995年3月 ベルリン、フィルハーモニー
五嶋みどりの出す、絶対的に洗練されている音色は本当に綺麗です。彼女しか出せないのではないかと思うほど。
音色やフレーズのつくり方が綺麗でクリアな奏法ですが、さっぱりしているわけではなく、中身の詰まった引き締まった音といえば良いのでしょうか、とても聞いていて楽しいです。
この曲で多い、こぶしの効いた演奏の正反対であり、艶や色気を求めるとしたら、この演奏には無い。
五嶋みどりの演奏にも増して素晴らしいのがベルリン・フィルの演奏。厚みがあって美しい音を出していて、第一楽章のクライマックスのたたみかけるようなところは、ため息が出てしまう。


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ヴァイオリン:諏訪内晶子
指揮:ドミトリ・キタエンコ
管弦楽:モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
1990年7月 モスクワ、グランドホール
彼女がチャイコフスキーコンクールで優勝した時の記念Galaコンサートの録音。
その気になって聴いているせいだろう、バイオリンを自在に操るってこういう事なんだと、天才の世界を少し、垣間見ることができるような気がする。
おそらく、競技後なので多少気楽に、自由に演奏したのではないでしょうか。
演奏は、ため息がでてくるくらいに美しく、華麗。そしてフレッシュな感じがする。
ただバイオリンの音色は、最近の演奏と比較したら楽器に依る音色が物足りなく感じられる。ストラディバリを貸与される前なので仕方ない。
しかし、ファンとしたら記念すべき一枚である。


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バイオリン:庄司紗矢香
指揮:ユーリ・テミルカノフ
管弦楽:サンクトペテルブルクフィルハーモニー管弦楽団
2008年11月7日 NHKホール 2008年NHK音楽祭にて
テレビで放送されたものの、DVD
庄司紗矢香の演奏は、押しと引きが明確で、粘りが強く、艶や色気がある演奏で、見ていて惹き込まれる。
なんといっても、いろいろなパートの超絶的な技巧をアップで見ることができて楽しい。


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バイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン
指揮:ユーリ・テミルカノフ
管弦楽:サンクトペテルブルクフィルハーモニー管弦楽団
2008年11月7日 NHKホール 2008年NHK音楽祭にて
テレビで放送されたものの、DVD
なんといっても彼女の演奏を見ているだけで楽しい。
あの妖艶な。
言い過ぎか(笑)
彼女の発する音色は、伸びやかで、澄んでいて青空に音が溶け込んでいくようなイメージがする。
N響も、彼女を迎えて奮い立っているかのようである。
もともと持っている暖かい音色に、華やかな音色を加えて、ときに清澄な音色で唄ってみせる。


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バイオリン:クリスチャン・フェラス
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1965年11月、ベルリン、イエス・キリスト教会
フランス生まれで49歳で急逝したクリスチャン・フェラス。彼はカラヤンに認められて国際的な名声を得ることになったが、その代表的な録音です。
ヴァイオリンソロでのフェラスの美音に酔います。音が実によく伸びる。イエス・キリスト教会の音響も素晴らしい。なによりも余韻がとてもいい。フェラスはテクニシャンですが、真摯に誠実に弾いていきます。ベルリンフィルの威力も凄まじいです。しかもしなやかで美しい。
カラヤンが歌わせていますね。


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

四季歩さんが上げた録音の内、オイストラッフはLPで、諏訪内晶子はLDで、持っています。後者には本選の時のものも入っていました。

さて、映画「オーケストラ!」では、最後にこの曲が女流バイオリニストによって演奏されます。これが、また、素晴らしいのです。勿論、全曲ではなく、かなりはしょったものですが、それでも、よくまとまっており、映画全体が盛り上がった状態で終わります。あ、演奏している女優さんも中々、綺麗です。Youtubeにその部分があります。「チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲」で検索を掛けると、「Le Concert highlight」と言うタイトルのものが出てきますが、それです。今もそれを聴きながらと言うか、観ながらこの文章を書いています。

No title

こんばんは

五嶋みどりのCDはライヴではないでしょうか?
正に1995年の3月のベルリンフィルハーモニーに私はいました^^ 立ち見でしたが、日本円で約800円でしたよ。確か開場の2時間前ぐらいから並んだと思います。コンサートの曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とベートーヴェンの「英雄」でした。指揮はもちろんアバドです。あのときは興奮しましたよ。ですから、五嶋みどりのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のCDは私は買わなければならないのです。が、まだ買ってません...

それにしても、いい感じで聴き込んでいらっしゃいますね。既に私の持ってるCDより多いです。そういえばカラヤン指揮のこの曲は聴いたことがないです。カラヤンはチャイコフスキーが得意の指揮者だったのできっと凄いんでしょうね。

コメントありがとうございます

matsumoさん
「オーケストラ!」は家族で見に行く予定にしていて、
私だけ急用で観ることができませんでした。
やはり、良かったと云ってました。
それで私はDVDを買うつもりでいて、
失念していました(笑)
これから買って楽しみます。

kurtさん
ベルリンフィルを現地で生ですか!!
参りました。
脱帽です。
生は素晴らしいですよね。
カラヤンとチャイコの組み合わせ、すごいですね。
私は、あまりカラヤン好きではないのですが、
チャイコは脱帽なとこありますね。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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