ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番

20131016

この曲は、例のジダーノフ批判が始まったことから、ショスタコーヴィチは出来上がっていたものの、発表を控えていて、スターリン死後の雪解けの雰囲気の中発表したもの。
ということは、ショスタコが本音で書きたかった曲だということになる。
4楽章あって、交響曲のようであり、いやいややっぱりカデンツァがあるから協奏曲か、と言う感じだ。

第1楽章 Nocturne - Moderato
ノクターン。序奏部を伴う三部形式。中間部の主題にはオクターブ内の12音がすべて現れており、ショスタコーヴィチが最晩年に用いた独自の12音技法の先駆となっている。
この夜想曲は導入部を持った三部形式からなり、全般的に沈鬱な色彩とムード的抒情性をたたえ、メロディーの半音階的構成は特徴的でもある。
夜想曲とはいえ、感情を厳しく制御した、思索的な音のする楽章を象徴するかのように低弦で重々しく4小節の序奏があると、独奏ヴァイオリンがその主題を模倣する。この主題は民謡といった従来の旋律から取られたものではなく、半音を巧みに使った非常に不定形のもので、導入部全体に渡る一つの無限旋律を形成し、理知的な進み方をしていく。また、15小節目以降に含まれる動機とその展開は、この楽章の骨格をなすものでもある。ちなみに、導入部前半の低弦の動き、24小節目よりあらわれるファゴットの使用は、交響曲第10番との類似を感じさせる。この導入部は、第1部の主要主題に発展し、かなり瞑想的な性格を帯びる。79小節目からの6小節の間はオクターヴ内の12の音が揃っている。

第2楽章 Scherzo - Allegro
ショスタコーヴィチがきわめて得意とする快速なスケルツォ。独奏ヴァイオリン主導で、次々にテーマが展開される。
交響曲第6番第2楽章後半部を髣髴とさせる、フルートとバス・クラリネットのオクターヴのおどけた主題を提示する。独奏ヴァイオリンがこれにアクセントを付ける。いわゆる西欧近代的なしゃれた味わいのある楽想である。33小節で主題は独奏ヴァイオリンに移り、楽器を加えて45小節から107小節はその発展形となる。やせた骨ばった独奏ヴァイオリンがきわめて印象的である。

第3楽章 Passacaglia - Andante
主題と8つの変奏によるパッサカリア。構成上、ここにパッサカリア楽章が置かれているのは、交響曲第8番第4楽章を彷彿とさせる。第8変奏の後は独奏ヴァイオリンの長大なカデンツァとなり、切れ目なく第四楽章に続く。楽器ではフルート、ピッコロ、タム・タム、シロフォン、チェレスタ、ハープが休みとなり、重厚な雰囲気をは裏腹に、簡素でシンプルな表現に終始している。また、調性の面でも常にヘ短調を維持しており、テンポの点でもアンダンテで一貫されていることも特徴的である。
この楽章は、ショスタコーヴィチのバッハの音楽に対する傾倒と見ることもできるが、そのことは後半のカデンツァで最もよく感じ取ることができる。

第4楽章 Burlesque - Allegro con brio
ブルレスケ。ロンド形式。バス・クラリネット、チェレスタ、ハープは使われない。

叩き付けるような激しい独奏とけたたましいまでの伴奏が特徴。前楽章からティンパニーが打ち出しを合図になだれ込む。2小節の序奏に引き続いて、管弦楽が土俗的なロンド主題をイ短調で華やかに奏する。主題は4小節目から木管群で提示されるが、シロフォンの鋭角的な輪郭付けをされており、舞曲調かつこの曲で最も判り易い最も自然な旋律で、明るい感じの音楽である。この主題は10小節目でニ長調に飛び移り、次の小節で変ホ長調になり、その次でまたいったん原調に戻る。すると、17小節目で突然ハ短調に転調し、またすぐに原調に復するといった風に、目まぐるしく調性が変わっていく。29小節以下、独奏ヴァイオリンが加わってクラリネットと対位法的にからみあいながら主題の発展を行い、64小節目から変形主題が独奏楽器を中心に現れて主部を完結する。

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ヴァイオリン:五嶋みどり
指揮:クラウディオ・アバド
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1997年12月 ベルリン、フィルハーモニア

ライブ録音したのが97年、26歳のこと。遅めのテンポでたっぷりとした弾きで、しっとりとヴァイオリンの音色がしっかり出ている。技巧的にまったく不安がないばかりか、一音一音に込められた覇気がひしひしと伝わってくる。
アバドの持ち味である繊細さと鋭さ、天下のベルリンフィルだけあって、2楽章や終楽章は凄まじいまでの鳴りっぷりです。


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ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
指揮:デーヴィット・ジンマン
管弦楽:NHK交響楽団
2009年1月10日 NHKホール

解説の西村さんが、カデンツァがすごい、とちょっと昂奮している。その迫力ある弾きっぷりに釘付けとなります。
リサ・バティアシュヴィリは、グルジア出身、16歳の時にシベリウス国際ヴァイオリンコンクールで認められ、現在20代後半、世界で活躍中。
彼女の音色は見事に美しく、きわめて流麗な演奏である。どこか思索的な演奏だなと思った。
すっくと伸びた長身の体をダイナミックに使いこの曲をこともなげに、ねじ伏せていく様は壮観で、ヴィジュアル的にもいうことなしのものがあった。
ちなみに使用しているヴァイオリンは日本財団から貸与されているストラディバリ。


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ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ
指揮:ピーター・ウンジャン
管弦楽:NHK交響楽団
2013年4月13日 NHKホール

ムローヴァは1983年に西側に亡命しているから、旧ソ連の状況をよく知っている音楽家。ヴィブラートは控えめで、その結果音楽の純度と緊張感が高い。3楽章のアダージョが圧巻。繊細で細かで表現力がすばらしい。N響も頑張って、リズム感がシャープで完璧なアンサンブルを見せた。終演後の喝采がN響定期にしてはすごいものだった。


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

ショスタコービッチのバイオリン協奏曲第1番ですか。聴いたことがある筈ですが、どのような曲だったか、全く記憶にありません。でも、確か、CDで持っていた筈だと思って調べてみたら、ヒラリー・ハーンによるのと、ナージャ・サレルノ・ゾネンバーグによるものの計2枚が見つかりました。でも、多分、両者とも私の気に入らなかったので、覚えていないのだと思います。

四季歩さんが持っている録音・録画では、五嶋みどりとヴィクトリア・ムローヴァは名前は知っていますが、録音等は全く聴いたことはなく、勿論、CD等も持っていません。デーヴィット・ジンマンは現代楽器によるオーケストラを隼古楽器風に指揮・演奏したことで頭角を現した指揮者だと思いますが、「ベートーベン:交響曲第9番」のCDを持っており、こちらは中々だと思いました。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
matsumoさんは、もともとショスタコはお好きでは
ありませんからね。
私はどういうわけか、ショスタコが好きなんです(笑)
ちょっと支離滅裂なところと、本格的なところが
混在していて、面白いです。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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