火の鳥・太陽編/手塚治虫

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少し前のことだが、壬申の乱を特集していたテレビ番組で、この本を紹介していた。
私は「火の鳥」はほとんど読んでいなかったので、アマゾンで探した。
ほんとにアマゾンは便利だと思う。
もう絶版になっている古い本も買えてしまうのだから。

これは、手塚治虫のライフワーク『火の鳥』の第12部で、実質的な最終話となった作品です。

ストーリー:
西暦663年、白村江(はくすきのえ、現・韓国中世部の川=錦江のこと)の戦いで唐・新羅連合軍に惨敗した倭・百済軍は敗走を重ねていた。百済王一族の兵士・ハリマは、唐軍に捕らえられ、生きながらに顔の皮をはがれ、狼の皮を被せられてしまいます。
狼の顔を持ったハリマは、不思議な老婆に助けられ、老婆の予言を信じて倭国へと渡る。人間・犬上として。
その倭国で犬上は、"狗族"という先住者たちと出会います。
狗族は、かつては人間から産土神として崇められていましたが、仏教の台頭によって魔物とされ、人里を追われて山奥にひっそりと暮らしていたのです。
その狗族の族長ルベツの信頼を得た犬上は、一族のために力を貸すことを誓いました。
その犬上は、狼の皮を被せられて以来、悪夢に悩まされていました。
そして次第に、自分以外のもうひとりの自分の存在を確信していきます。犬上の精神は、21世紀に生きる"シャドー"のエージェント・板東スグルの精神でもあったのです。
21世紀の日本では、火の鳥を神と崇拝する宗教団体"光"が地上を支配し、地上から追われた"シャドー"たちとの抗争がつづいていました。そしてそれは、まるで仏教と産土神たちとの争いのようでもあったのです。

犬上は仏教を強要する中大兄皇子(天智天皇)に抗するために、信仰の自由を認めるという大海人皇子(後の天武天皇)に加勢して戦います。ところが、大海人皇子は政権をとった途端に、”日輪信仰”を人々に強要する宣言を発するようになってしまいます。

一方、現代の物語は2000年ころです。火の鳥を崇める宗教組織”光”が権力を得て、それに抵抗する者はすべて地下都市へ強制的に追いやられます。地下都市では”シャドー”組織が、地下都市を解放するために光宗教組織を攻撃します。ついにはシャドー組織が勝利をおさめますが、権力を手中にした途端、シャドー組織の首領は新しい宗教組織”不滅教”をつくって、人々を従わせようとします。

国家神道の始まりともいえる大海人皇子(天武天皇)による”皇祖神信仰”も描かれています。
この時の大海人皇子の宣言は下のように描かれています。
「帝王というものは、実に不信感と欲求不満をおこさせるものだ…この不信感は日毎に倍になっていく…なき兄君の気持もわかる。側近の誰も信じられなくなるからな。仏教はほどほどにおさえたし、一応、ほかの信仰もみとめてやったのだが、もし、狂信的な連中が、なにかの宗教をタテに、おれにそむいたら?」
「わが国は日の本の国、大日本帝国である! そして私は天の神の子、天子なのだ! この国の神は日輪<にちりん>、すなわち、天を照らす大神<おおかみ>である。すべての国民は、この神を信じ、尊ばぬばならぬ!! 私に背くことは、天に背くことだっ。ここに厳命するっ。私の神をあがめぬものは、反逆者とみなし断罪するぞ!」


手塚治虫が ”宗教” について言いたかったことは、物語の中で、火の鳥が犬上の心に語りかける場面があります。これが手塚治虫の宗教観でしょう。
「あなたによいものを見せましょう。ここは、あなたの生きている世界から千年あまりも、あとの世界です。この世界にも、光族と影(シャドー)という、二つの信仰のはげしいたたかいがありましたわ。でも私は、人間たちが、しぜんに解決するのを、じっと見ていただけ。そう、むごたらし戦いでした。宗教戦争はいつも、むごいのです。」「そう、人間というのは何百年、何千年たっても、どこかで、いつも、宗教のむごいあらそいをおこすんです。きりがないのです。とめようがありません。それはねえ、宗教とか、人の信仰って、みんな人間がつくったもの。そして、どれも正しいの。ですから、正しいものどうしのあらそいは、とめようがないでしょ。」
「わるいのは、宗教が権力とむすばれた時だけです。権力に使われた宗教は、残忍なものですわ。人間の権力は…人間自身の手でなくすもの…だから、私は見ているだけ」


この本では、仏教が侵略者であり、悪者のように描かれている。
もし大海人皇子(天武天皇)が政権を握らないで、天智天皇から大友皇子に政権が引き継がれ、仏教国家が推進されていったら?
天武天皇が推進した、日本書紀と古事記の編纂が無かったら?
同じく天武天皇が制定した伊勢神宮の式年遷宮が無かったら?

私が追い求めている、八百万の神々はどうなっていただろうか・・・・・・・



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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

手塚治虫ですか、以前は「ブラックジャック」は結構、好きでしたが、今はもう、違和感を覚えると言うか、私の趣味ではなくなっています。「火の鳥」も大昔に一度だけ読んだことがありますが、違和感が出まくりでしたし。多分、絵とか、人物像とかが、私の趣味に合わないのでしょうね。

No title

四季歩さん お久しぶりですね。
「火の鳥」! 全巻持ってます!
私は漫画をあまり読みませんが手塚治虫は好きです。
「火の鳥」は子供たちとともに何度も読み返しました。宇宙さえも小さく見えてしまうほどの壮大なスケールの物語ですね。
人間の愚かさ、繰り返される歴史、火の鳥の血を飲んだがために未来永劫生きなければならない残酷な運命などなど、どの編を読んでもいつも深いため息と悲しみで終わります。

四季歩さんの仏教以前の八百万の神々もキリスト教以前の欧州の神々も魅力的でしたね。

コメントありがとうございます

matsumoさん
火の鳥というのは、好き嫌いがはっきりするかも
知れませんね。
1000年を超えての、ストーリーですからね。
それに違和感を覚えると、話に入っていけないかも
知れません。


Jさん
私のほうこそ、ご無沙汰しています。
「火の鳥」を全巻お持ちと聞いて、びっくりしています。
それはすごいですね。
お子さんと一緒に読んだというのも素晴らしいです。
私は、壬申の乱をきっかけに「太陽編」をいきなり
読みました。
「火の鳥」全巻を読んでみようかな。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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