古事記を知る(24)

20131226

4-7 大年神の神裔
故其大年神。娶神活須毘神之女伊怒比賣生子。大國御魂神。次韓神。次曾富理神。次白日神。次聖神。
五神又娶香用比賣此神名以音生子。大香山戸臣神。次御年神。二柱又娶天知迦流美豆比賣訓天如天亦自知下六字以音生子。奥津日子神。次奥津比賣命。亦名大戸比賣神。此者諸人以拜竈神者也。次大山咋神。亦名山末之大主神。此神者坐近淡海國之日枝山。亦坐葛野之松尾用鳴鏑神者也。次庭津日神。次阿須波神。此神名以音次波比岐神。此神名以音次香山戸臣神。次羽山戸神。次庭高津日神。次大土神。亦名土之御祖神。九神
上件大年神之子。自大國御魂神以下大土神以前。併十六神。
羽山戸神娶大氣都比賣神
自氣下四字以音生子。若山咋神。次若年神。次妹若沙那賣神。自沙下三字以音次彌豆麻岐神。自彌下四字以音次夏高津日神。亦名夏之賣神。次秋毘賣神。次久久年神。久久二字以音次久久紀若室葛根神。久久紀三字以音
上件羽山戸神之子。自若山咋神以下若室葛根神以前。併八神。

(読み)
カレソノオホトシノカミ カムイクスビノカミノムスメイヌヒメニミアヒテウミマセルミコ オホクニミタマノカミ ツギニカラノカミ ツギニソホリノカミ ツギニムカヒノカミ ツギニヒジリノカミ マタカガヨヒメニミアヒテウミマセルミコ オホカガヤマトオミノカミ ツギニミトシノカミ マタアメシルカルミヅヒメニミアヒテウミマセルミコ オキツヒコノカミ ツギニオキツヒメノミコト マタノナハオオベヒメノカミ コハモロヒトノモチイツクカマノカミナリ ツギニオホヤマクヒノカミ マタノナハヤマスエノオホヌシノカミ コノカミハチカツアフミノクニノヒエノヤマニマス マタカヅヌノマツノヲニマスナリカブラニナリマセルカミナリ ツギニニハツヒノカミ ツギニアスハノカミ ツギニハヒギノカミ ツギニカガヤマトオミノカミ ツギニハヤマトノカミ ツギニニハタカツヒノカミ ツギニオホツチノカミ マタノナハツチノミオヤノカミ
カミノクダリオホトシノミコ オホクニミタマノカミヨリシモオホツチノカミマデ アハセテトヲマリムハシラ
ハヤマトノカミオホゲツヒメノカミニミアヒテウミマセルミコ ワカヤマクヒノカミ ツギニワカトシノカミ ツギニワカサナメノカミ ツギニミヅマキノカミ ツギニナツタカツヒノカミ マタノナハナツノメノカミ ツギニアキビメノカミ ツギニククトシノカミ ツギニククキワカムロツタネノカミ
カミノクダリハヤマトノカミノミコ ワカヤマクヒノカミヨリシモワカムロツタネノカミマデ アハセテヤハシラ

(現代語訳)
 さて、かの大年神が神活須毘神の女の伊怒比賣を妻として生んだ子は、大國御魂神、次に韓神。次に曾富理神、次に白日神、次に聖神の五神である。また香用比売を妻として生んだ子は、大香山戸臣神、次に御年神の二柱である。また天知迦流美豆比賣を妻として生んだ子は、奥津日子神、次に奥津比売命、またの名は大戸比売(オホヘヒメノ)神である。この神は、人々が大事にお祭りしている竈の神である。次に生まれたのは大山咋神で、またの名を山未之大主神という。この神は近江国の比叡山に鎮座し、また葛野の松尾に鎮座して、鳴鏑を神体とする神である。次に生まれたのは庭津日神、次に阿須波神、次に彼此岐神、次に香山戸臣神、次に羽山戸神、次に庭高津日神、次に大土神、またの名は土之御祖神の九神である。
 上にあげた大年神の子の大國御魂神から大土神まで、合わせて十六神である。
 羽山戸神が大気都比売神を妻として生んだ子は、若山咋神、次に若年神、次に妹の若沙那売神、次に弥豆麻岐(ミヅマキノ)神、次に夏高津日神で亦の名は夏之売神、次に秋毘売神、次に久々年神、次に久久紀若室葛根(ククキワカムロツナネノ)神である。
 上にあげた羽山戸神の子の若山咋神から若室葛根神まで、合わせて八神である。

(注)
○大年神:須佐之男命の神裔を述べた伝承の中に、須佐之男命と神大市比売の間に生まれた神とされている。
○神活須毘神:名義未詳。
○伊怒比売:名義未詳。
○大国御魂神:国土の神霊の意。
○韓神 朝鮮系の渡来氏族の信仰した神であろう。
○曾富理神:ソホリは新羅の王都を意味する語であろうという。これも朝鮮系の神であろう。
○白日神:名義未詳。
○聖神:大阪府泉北郡の聖神社の祭神で、百済系の渡来人の信仰した神であろう。
○香用比売:名義未詳。
○大香山戸臣神:名義未詳。
○御年神:大年神と同様に年穀を掌る神。
○天知迦流美豆比賣:名義未詳。
○奥津日子神・奥津比売命:名義未詳。
○大戸比売神(おほへひめのかみ):「へ」は竈のこと。竈の女神。
○大山咋神:「くひ」は神霊の依り代としての杭の意であろう。日吉神社の祭神で比叡山の山の神。
○山末之大主神:「山未」は山の頂。
○近つ淡海国:遠つ淡海国(遠江国)に対して、近江国(滋賀県)をいう。
○日枝山:比叡山。大津市の日吉神社に祭られている。
○葛野の松尾:山城国葛野郡(京都市右京区)の松尾神社。
○鳴鏑:鏑矢のこと。松尾神社の祭神は、鳴鏑を御神体とする雷神であった。
○庭津日神:下の「庭高津日神」と同様に、屋敷を照らす日の神であろう。
○阿須波神・波比岐神:名義未詳であるが、屋敷の神であろう。この二神の名は、祈年祭の祝詞にも見えている。
○香山戸臣神:名義未詳。
○羽山戸神:山のふもとをつかさどる神の意であろう。
○庭高津日神:この神の名は、践祚大嘗祭に際して、斎郡の斎院に祭る八神として、阿須波神・彼此伎神とともにあげられている。
○大土神・土之御祖神:大地の母神の意。
〇九神:実際は十神である。
○大気都比売神:食物をつかさどる女神。
○若山咋神:大山咋神と同様、山をつかさどる神の意。
○若年神:大年神と同様、年穀をつかさどる神。
○若沙那売神:サナメは「稲の女」の意で、田植えをする早乙女の意であろうという。(倉野憲司博士説)
○弥豆麻岐神:濯概をつかさどる神。
○夏高津日神:空高く照る夏の日の神。
○久々年神:稲の茎が成長して実ることを表わす。
○久々紀若室葛根神:材木で新室を建て葛で結い固める意で、新嘗祭を行なうための屋舎を造営することであろう。

(解説)
 大年神の神裔を述べたこの伝承は、前の須佐之男命の神裔の系譜を承けて記されている。
大年神の神喬に現われる神々の中で注目されるのは、日吉神社の祭神(大山咋神)と松尾神社の祭神(火雷神)とである。松尾神社は大宝元年に、秦忌寸都理によって創祀せられたと伝えられている。渡来氏族である秦氏は、かねて氏神として信奉していた比叡山の大山咋神を、秦氏の本拠の地である葛野の松尾神社に遷し祀ったのであろう、といわれている。このほか、韓神・曾富理神・聖神なども、秦氏または朝鮮系渡来人の信仰した神であろう。
 松尾神社の鳴鏑を依り代とする神は、下賀茂神社の祭神と同様雷神で、雷神は農耕に関係の深い水神として信仰された。
大年神の神裔に、農耕や穀物、竈などに関する神々が現われている。
羽山戸神から若室葛根神までの系譜は、早乙女が田植えをし、水を注ぎ、真夏の日が照りつけ、秋には稲が成長して実り、収穫祭としての新嘗祭を行なうための屋舎を新築するまでを語った、系図型の神話となっている。


赤坂山王日枝神社の写真を載せておきます。

日枝神社の特徴である、山王鳥居。
131226hie01.jpg


赤坂山王日枝神社
131226hie02.jpg



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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

大国主もそうでしたが、この大年神も一夫多妻制ですね。ギリシア・ローマ神話や北欧神話もそうですが、神話って、一夫多妻制が多いような気がします。これって、やはり、沢山の子供を作る必要があるからなのでしょうね。

さて、以前も書きましたが、2年間程、赤坂山王日枝神社から5分位のビルの中に勤めていたことがあります。と言うことで、正月にも言ったことがありますが、お詣りをした人達に、神子さん達が鈴を鳴らして浄めていたことを思い出しました。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
たぶん、編纂するときに、各氏族の先祖としている神を
網羅するのにも必要だったんでしょうね。

お正月には、日枝神社ですか。
いいことを教わりました(笑)
巫女さんに祝福されるなんて、気持ちいいですよね。

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Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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