ジャーニー・ボーイ/高橋克彦

20141101

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今年の夏に北陸に帰省したときに、新幹線の中に置いてある「トランヴェール」という小冊子で特集していたのが「イザベラ・バード」という英国人女性で、「日本奥地紀行」という本を出している。
明治11年、開国後間もない日本を訪れ、4カ月をかけて横浜から北海道まで旅した女性である。
その小冊子で紹介されていたこの本を、読もうと思ってメモしておいた。
作者が、テレビで時々目にした盛岡市在住の直木賞作家だというのも読む気になった。
それを、やっと読めた。

イザベラ・バードと通訳者伊藤鶴吉の道中を描いた長編小説だが、この二人は実在の人物である。
主人公の伊藤をバードの護衛役に仕立て、伊藤とその仲間がバードの命を狙う敵を倒しながら進むというストーリーになっている。

 横浜で働きながら外国人から英語を学んだ伊藤は、若くて小柄ながら腕が立ち、「ピストル・ボーイ」の異名を持つ。明治政府の関係者から秘密裏に、英国の賓客であるバードの通訳兼護衛役を命じられ、バードに事情を隠したまま旅に同行する。
国内は、明治維新のわずか10年後。国を二分する戦いの余韻が残り、直前に大久保利通の暗殺事件もあった。著者は当時の国内情勢を、旅の舞台裏として表現した。
東京を起点とする旅は、街道沿いの日光までは順調だった。日光から北は、バードが「真の日本の姿が見たい」と言い出したため険しい山道を行くことになり、バードを狙う敵が次々現れる。
明治政府に不満を持つ人間は、それこそ五万といる。バードに死傷を負わせれば、明治政府のメンツは丸つぶれである。英国の貴婦人バードは未開の東北では目立って狙い易いことこの上なし。
狙わない方がおかしい、という状況だ。
 同じ護衛役である仲間と出会った伊藤は、力を合わせバードに気付かれないよう、敵を退ける。会津で敵の正体が見え始め、目的地の新潟を前に、手ごわい相手との最後の暗闘が待っていた。
 バードは、文明開化が進む東京や横浜と対照的な貧しい地方の暮らしを伝えようとするが、伊藤は、それが国の恥になると反発する。2人のやりとりを通じ、現代にもつながる国づくりの在り方を問い掛ける。
ほぼ全裸で日常を送るなど、まだ文明の行き届いていない地方の村民の生活やその対策が不十分な日本政府に対して批判するバードと、日本人の立場から当時の日本の状況を説く鶴吉の会話から、明治初期における日本(特に地方の村落)の現状が浮かび上がってくるので、歴史学的な読み応えもありますね。

 私もすっかり東京近郊に住んで都会生活になじんでしまったが、時代が異なるので程度の違いは大いにあるとはいえ、この本に出てくる地方の人の素朴さ、珍しいものに対する丸出しの好奇心など、読んでいて田舎特有の空気がとても懐かしかった。
バードが書いた文章を、日光のところで紹介してあるが、その描写は日光東照宮について書かれたもので、私がいままで読んだものをはるかに凌駕して素晴らしいものだ。

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小石をきれいに敷きつめた中庭は、真っ赤な木の塀に囲われているが、そのまわりに三つの豪華な建物がある。そこには寺の宝物が入っている。それから豪奢な厩があり、神の使用のために三頭の神聖な白馬が飼われている。神聖な水を入れる堂々たる花崗岩の水槽(御手水舎)は素麺滝から水を引いている。非常に装飾を施した建物は、仏教聖典の全集を所蔵している。ここから石段を上ると、もっと小さな中庭に出る。そこにはすばらしい細工と装飾の鐘楼がある。それに劣らず美しい太鼓の楼があり、社、枝付き燭台、鐘、すでに述べた灯籠のはかに非常に大きな青銅の灯寵がある。
 この庭から別の階段を上ると陽明門に出る。毎日そのすばらしさを考えるたびに驚きが増してくる。それを支える白い円柱には、架空の動物麟鱗の大きな赤い喉をもつ頭からできている柱頭がある。台輸の上の方に張り出した露台があり、門のまわりをめぐり、その手摺は竜の頭が背負っている。中央には二匹の白竜が永久に戦っている。下方には子どもたちが遊んでいる高い浮き彫りがあり、次にはなやかな色彩の横木の網細工があり、中国の七賢人がいる。高い屋根は、真紅の喉をもつ金色の竜頭に支えられている。門の内部には、白く塗られた側壁高があって牡丹の上に上品な唐草模様で縁どられている。回廊が左右に走っている。その外壁は二十一の仕切りがあり、鳥、花、木のすばらしい彫刻で飾られている。
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今度はいよいよ、イザベラ・バードが書いた「日本奥地紀行」を読まねばなるまい・・・・・・



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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

明治時代に異人女性が日本国内を旅行したことは知っていましたが、現在でも、その著作が出ているのですね! ううん、私も読みたくなりました。

それにしても、女性で探検家ってすごいですよね! 北アルプスの山々に登ったウォルター・ウェストンより遙かにすごいと思いました。

matsumo さん

コメントありがとうございます。
まったくですよね。
ほんとにすごいと思います。
現地の人は驚いたでしょうね。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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