摩多羅神(またらじん)/日本の神々の話

20150203

あるいは摩怛利神:またりしん)ともいうが、天台宗、特に玄旨帰命壇における本尊で、阿弥陀経および念仏の守護神ともされる。
常行三昧堂(常行堂)の「後戸の神」として知られる。
『渓嵐拾葉集』第39「常行堂摩多羅神の事」では、天台宗の円仁が中国(唐)で五台山の引声念仏を相伝し、帰国する際に船中で虚空から摩多羅神の声が聞こえて感得、比叡山に常行堂を建立して勧請し、常行三昧を始修して阿弥陀信仰を始めたと記されている。
しかし摩多羅神の祭祀は、平安時代末から鎌倉時代における天台の恵檀二流によるもので、特に檀那流の玄旨帰命壇の成立時と同時期と考えられる。
この神は、丁禮多(ていれいた)・爾子多(にした)のニ童子と共に三尊からなり、これは貪・瞋・癡の三毒煩悩の象徴とされ、衆生の煩悩身がそのまま本覚・法身の妙体であることを示しているという。
江戸時代までは、天台宗における灌頂の際に祀られていた。
民間信仰においては、大黒天(マハーカーラ)などと習合し、福徳神とされることもある。更に荼枳尼天を制御するものとして病気治療・延命の祈祷としての「能延六月法」に関連付けられることもあった。また一説には、広隆寺の牛祭の祭神は、源信僧都が念仏の守護神としてこの神を勧請して祀ったとされ、東寺の夜叉神もこの摩多羅神であるともいわれる。

一般的にこの神の形象は、主神は頭に唐制の頭巾を被り、服は和風の狩衣姿、左手に鼓、右手でこれを打つ姿として描かれる。また左右の丁禮多・爾子多のニ童子は、頭に風折烏帽子、右手に笹、左手に茗荷を持って舞う姿をしている。また中尊の両脇にも竹と茗荷があり、頂上には雲があり、その中に北斗七星が描かれる。これを摩多羅神の曼陀羅という。
なお、大黒天と習合し大黒天を本尊とすることもある。

この神の祭礼としては、京都太秦広隆寺の牛祭が知られる。
京都右京区太秦(うずまさ)蜂岡町にある大酒神社(おおさけ)の牛祭は京都三奇祭の一つ。かつては神社祭であったが、現在は、広隆寺が行っている。そのため、広隆寺の「牛祭」と広く言われるようになってきている。十月十日(夜8:00頃)に奇妙なお面をつけて牛に乗った摩多羅神がお出ましになる。赤鬼、青鬼、二人づつ先導にして、広隆寺西門から出て行列をする。やがて、山門の前を通り、東門より境内に戻る。薬師堂の前の祭壇を牛に乗ったまま三周したあと、祭壇に登り、赤鬼・青鬼とともに祭文を読みはじめる。独特の節回しで長々と厄災退散を祈願する。その間も、祭の世話役や見物人などから、やじが飛ぶ。最後に、祭壇から薬師堂の中に駆け込んで終わりとなる。摩多羅神の祭りは、かつて「おどるもあり。はねるもあり。ひとえに百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)に異ならず。(太秦広隆寺祭文)」と言われ、昔は、かなり乱痴気な祭と言われているが、今は整然とした儀式である。摩多羅神のいでたちは白衣装束に紙をたらした冠をかぶり、その頭巾には北斗七星を載いている。この奇相でおかしな摩多羅神、サンスクリットないし、インドの俗語であるといわれるも、その語彙は特定できない。また、仏教の守護神とされているが教典にも定かではな い。どちらかといえば道教神のようだ。
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梅原猛氏は次のように述べている。
私は摩多羅神にディオニソスの神の面影を見る。ディオニソスの特徴は性的放縦であり、その祭に人々は酒に酔って性器をかたどった張りぼてをもって、しきりに猥褻(ワイセツ)なことを言って町を練り歩く。私はこの広隆寺の牛祭にディオニソスの神の祭を見る思いであった。摩多羅神は、はるばると日本にやって来たディオニソスではないだろうか。(梅原猛著『京都発見二路地遊行』より)

摩多羅神坐像/島根県・清水寺
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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

上記のこと、初めて知ったことばかりです。全く、知っていることより知らないことの方が遙かに多いのは困りものです。

それにしても、牛祭、一度は見てみたいものだと思いました。でも、京都の10/10と言えば、まだ、紅葉には早いですし、機会が無さそうです。

後、下の「歩測」のことですが、「復」の字が抜けていました。すなわち、「20mを16復歩」、すなわち、32歩で歩くように訓練していました。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
まったく八百万の神と云いますが、知らない神が
次々と現れてきます。
楽しいですが、あきれるほど多いですね。
ただ、本来は自分の行動範囲のなかで、
あそこにはああいう神さま、ここにはこういう神さまと、
知っていれば済むんですよね。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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