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四千万歩の男(二)/井上ひさし

20150503

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第二巻を読み終えました。
ちょっとバタバタしていて、しばらく放っておいたので、ちょっと時間がかかった。
この本は、著者らしくすこぶる長編である。
第一巻が663ページだった。第二巻は634ページだった。
この調子で5巻あるという。
しかし、伊能忠敬の歩いた範囲の四分の一か、五分の一かしか書いていない。井上ひさしがもっと長生きしたら、長編小説の世界記録が生まれたのではないか。
私はこういうのが好きだ。
よ~~し、読んでやる。と(笑)

第二巻の目次
・箱館まで
・隠密詮議
・大野村逗留
・礼文華のオムシャ
・東蝦夷の図
・百人の千人同心
・道案内人
・長逗留

津軽海峡を渡り、まず箱舘に向かうところから始まります。
この本は井上ひさしのフィクションがかなり入っているので、だから読み物としてとても面白いのだが、公儀と松前藩の蝦夷地統括を巡る駆け引き、加えてアイヌの独立の動きと弾圧政策、ロシア南下に対するさまざまな思惑を始め、利権に群がるさもしい根性など、これは当然の人間の営みだと思える。

この巻でも様々な人物が登場する。
高田屋嘉兵衛、間宮林蔵と出会い、あるいは大黒屋光太夫や平賀源内に話しが飛んだりする。
これに当時の蝦夷の様子と和人に対するアイヌの抵抗運動が重なり、読んでいて興奮しきりである。
そして今回も公儀測量方が暗殺された不始末を理由に松前藩を潰そうとする陰謀が仕組まれ、それをアイヌ抵抗運動のリーダであるエカシクチャや伊能忠敬を嫌いつつも公儀の陰謀から松前藩を守ろうとする剣客が伊能を助ける話しが織り込まれている。

井上ひさしのアイヌの自立と友好を願う気持ちが随所に光る。
それにしても、日本人はアイヌの人たちにひどいことをしたものだと思う。
アメリカ大陸で白人がインディアンに行った仕打ちよりもひどいのではないか。
まあ、今でも沖縄にひどい苦労を押し付けていても、内地では皆平気にそんなことは、われ関せずと生活しているからなあ・・・・・・・・

この巻で、八王子千人同心が登場したのでビックリした。
八王子千人同心というのは、かって武田信玄に仕えた武士たちで、武田家滅亡後徳川家に召し抱えられ、江戸の甲府方面の境界警備として八王子に住んだ。
やがて太平の世になると、境界警備もないだろうと、日光東照宮の火の番警護の役となり、八王子と日光の間を「日光脇往還」で往復していた。
その「日光脇往還」が狭山市にも通っているので、私にもおなじみである。
それがどうして蝦夷にいるのかというと、寛政11年(1799)に八王子千人同心の十組の一つ「原組」100名が蝦夷地開拓を願い出て、許されたものだという。
それ以降は九百人同心となっていたわけか(笑)

それはともかく、歴史講座から一緒で歴史クラブでの友人で、伊能忠敬の事蹟をずっと追いかけている稲葉さんから、ついこの間八王子に行ってきましたと、「塩野滴齋」という方の情報と写真をもらったばかりだ。
蝦夷にも行き、「新編武蔵風土記稿」執筆にも加わっている。
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塩野滴齋の墓のある極楽寺
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びっくりしたのは、陰謀家として登場の間宮林蔵。
どうも井上ひさしは間宮林蔵のことは好きではないらしい。

伊能忠敬という碑とは、とにかく「愚直」。
この「愚直」というのは、井上氏が若い頃(NHKの放送作家時代)に伊能忠敬を調べた時の感想だそうです。
その時には、偉大ではあるが愚直な作業、と思っていたのが 20数年後には「 愚直でなければ、そんな大事業はできない。あらゆる大事業を支えてきたのは、この愚直さなのだ 」という風に変わってきたとか・・・


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

文庫本で630ページと言うと、薄手の文庫本の2冊分ですね。ちなみに、先日読んだ「司馬遼太郎:国盗り物語(4)」は718ページ、本日、読み終えた「司馬遼太郎:国盗り物語(3)」も718ページでしたから、こちらの方が多いです。

まあ、何十年もかけて1つの事を完成すると言う仕事は、その仕事が日常的にならない限り、情熱と飽きがきて、続かないと思っています。


matsumoさん

コメントありがとうございます。
そうですよね。
本当に大変だと思います。
時代も、いかに器用に生きようか、
という風潮だと思います。
だから「愚直」という言葉には
心動かされますね。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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