山王塚古墳発掘調査見学会

20160313

昨日、11日(土)に見学会に参加しました。
これは、2月に川越博物館で三回の講座「川越の古代」を受講したときに、博物館のチラシで知り、楽しみにしていたものです。
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まずは、見学会で配布された資料から、基礎知識を述べておきましょう。
冒頭に説明者から、この古墳は上円下方墳としては日本最大であり、現在国指定文化財の申請をしていると、説明があった。
複室の石室が存在することは分かっており、この夏に調査する予定だとか。
貴重なものが発見されればいいなと思う。

○山王塚古墳の造られた時代
 古墳は3世紀半ばから7世紀にかけて造られた高塚式のお墓です。
考古学では3世紀半ばから4世紀に造られたものを前期古墳、5世紀に造られたものを中期古墳、6世紀のものを後期古墳、7世紀を終末期古墳と呼び、時期区分しています。
これによれば、7世紀後半に造られたと考えられる山王塚古墳は終末期古墳として位置づけられます。
山王塚古墳が造られた7~8世紀は大化改新(645年)、壬申の乱(672年)を経て、日本が律令国家の建設に向け大きく揺れ動いた時代です。
この地域でも、中央の地方経営政策の一環として武蔵国への渡来人の移住がはじまり、霊亀2年(716)には高麗郡が建郡されます。
また、7世紀後半には山王塚古墳の西方を南北に貫いて古代の官道である東山道武蔵路が建設されます。
古墳の出現以来権力のシンボルとして造られ続けてきた前方後円墳は、この時代すでに築造されなくなり、各地に初期寺院が造られるようになります。この近辺では、7世紀後半に創建された勝呂廃寺(坂戸市)が有名です。
このように、旧来の体制が崩れ、新たな制度・価値観が創出される激動の時代に山王塚古墳は造られたのです。

○南大塚古墳群について
 川越市内には下小坂古墳群(小畔川左岸台地)・的場古墳群(入間川左岸台地)・仙波古墳群(仙波台地北東縁)などの古墳群があります。
これらはいずれも河川に臨む台地の縁辺に位置しています。
山王塚古墳の属する南大塚古墳群は入間川右岸にあり、台地縁辺に沿って約3kmにわたり古墳が点在しています。現在の入間川街道沿いに古墳が分布していると言うとわかりやすいでしょう。これらの古墳は大きく4つの支群に分けられます。地名をとって西方から、大袋新田支群、豊田本支群、大塚支群、豊田町支群と呼んでいます。
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現在27基の古墳が確認されていますが、開発により消滅した古墳もあり、現存するのは本来の数より少なくなっています。これまでの調査から本古墳群は、小規模な前方後円墳(南大塚4号墳)と多くの小円墳からなる群集填であり、5世紀前葉から7世紀代にかけて造られたことがわかっています。大塚支群に属する上円下方墳・山王塚古墳は最終段階の古墳と考えられ、これ以降、古墳は造られなくなります。
なぜこの場所に造られ、誰が眠っているのか、古墳時代の終りと古代の始まり、ふたつの時代をつなぐ謎を解く鍵となるのが山王塚古墳であると言えるでしょう。

○上円下方墳とは何か
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 日本が律令国家建設に向かってひた走っていた7世紀から8世紀、墓制の上でも大きな変化が起こりました。
畿内では大王の墓として造られ続けた巨大な前方後円墳に代わり、円墳・方墳・八角形墳などが陵墓として築造されるようになります。
上円下方墳もこうした一連の流れの中で登場します。
最初の上円下方墳がいつ、どこに造られたのか、実はまだよくわかっていません。
蘇我馬子の墓ではないかと言われている石舞台古墳(奈良県明日香村・一辺 51m)は本来、上円下方墳だったとする説があります。しかし、現在は盛土が失われており確実に上円下方填であったかどうかははっきりしません。古墳の形が被葬者の身分や職掌を表し、上円下方墳という形が有力な支配者層にのみ許された墳形であるとするならば、その後各地に造られる上円下方墳のモデルとなる最初の上円下方墳は近畿地方のどこかに眠っているのかも知れません。
7世紀後半、関東地方では横穴式石室を埋葬施設とした大型の上円下方墳が築造されます。
武蔵府中熊野神社古墳(東京都府中市・一辺 32m)は全長9m、天文台構内古墳(東京都三鷹市・一辺 30m)は全長7m、ともに切石切組・複室構造の長大な横穴式石童をもちます。また、墳丘には2つのタイプがあり、武蔵府中熊野神社古墳は墳丘を葺石で覆い、天文台構内古墳は地山から下方部を削り出し、墳丘は土が剥き出しのままです。山王塚古墳は天文台構内古墳と類似した構造をもつこの時期最大の上円下方墳と考えられます。

見学会は14時から始まりました。
寒いなか、ずいぶんと見学者が集まりました。
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二つの班に分かれて見学が開始され、私の班は、出土品の説明⇒7号トレンチ⇒8号⇒4号⇒5号⇒6号の順に説明を受けた。
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出土品:
近くの南大塚8号墳より出土した「埴輪」
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同じく南大塚8号墳より出土の「直刀」
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南大塚8号墳より出土の「刀柄頭の一部」
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南大塚8号墳より出土の「刀鞘の一部」
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山王塚古墳より出土品
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○7号トレンチ
現在の山王塚の参道が多より少し高くなっているが、古墳当初からのものか、後から参道が造られたのかの調査。

地山を掘り残して作った陸橋(ブリッジ)が確認できた。古墳時代のもの。
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両端(白線より外)は溝が掘られたため、明らかに違う土が埋まっている。
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○8号トレンチ
周溝のコーナーの調査
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掘り込みは浅くゆるやかで、この辺は結構雑に造られていた?
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○4号トレンチ
上円下方墳の断面と作り方を調査
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周堀の立ち上がりは、以前の発掘調査では明瞭だったが、今回のこのトレンチの場所は江戸時代に掘られた溝で壊され不明瞭。
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下方部断面
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上円部の、古墳築造時の地表(一番下の黒土)、斜めに盛られている上円部の版築(赤土)がはっきりわかる。
赤土は周溝を掘って得たものを盛っている。
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○5号トレンチ
同じく、反対側の上円下方墳の断面と作り方を調査。
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赤土と黒土を交互に積んで上円部を造っている。
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○6号トレンチ
堀の外縁の確認
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堀の外縁に窪地が掘られている。堀との関連性は今後検討。
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これで、見学会は終了。
今回の見学で、上円部の版築の方法がよくわかったのは収穫だった。
国指定の文化財になればいいと思った。

場所の確認などで、2月に事前に訪れていたので、その時に撮っておいた、山王様などをここで紹介しておく。

山王塚の全景
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山王塚の説明板
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鳥居
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塚の頂上の状態
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山王さま
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山王様のお使いの猿が左右に侍る。
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近くに、寛文12年(1672)造立の庚申塔がある。
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三猿の下に蓮が彫られている。
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(了)


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

なるほど、発掘って、私はてっきり、全部を掘るのかと思っていましたが、労力と費用の点から、最近は溝を掘るだけなのですね。確かに、過去に見た遺跡発掘現場を思い出すと、飛鳥山公園や滝野川公園の側では、溝と穴で成り立っていて、全体は掘っていませんでした。また、尾久駅近くの貝塚も何カ所か深い溝が掘られていただけでしたし。

それにしても、3~7世紀の古墳でしたら、以前に太安万侶の墓碑が出てきたように、文字が書かれたものが出て欲しいですね。そうすれば、色々なことがかなり明確になりますので。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
太安万侶の墓発見は、奇跡でしたね。
なにしろ、一面のお茶畑のなかで、
栽培するお茶を変えようと思わなかったら、
発見されなかったのですから。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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