気比神宮境内社・兒宮の狛犬
20170311
所在地:福井県敦賀市 越前國一之宮・気比神宮の境内社・兒宮
撮影日:2016年8月2日
年代:享保11年(1726)
材質:石造
型式:越前禿(えちぜん かむろ)型
昨年の8月に青春18キップで敦賀の越前一之宮・気比神宮に参拝したが、境内には江戸時代の狛犬が三組あり、その全てが越前禿(えちぜん かむろ)型だった。
その中で、一番古いのが今回のもの。
気比神宮については、記事があります。
その記事を見る
兒宮

この狛犬は、左右の大きさがかなり異なり、「母子狛犬」と呼ばれている。

右側の阿形



享保11年と、足に刻まれている。

左側の吽形



特徴:
・右側が阿形、左側が吽形で、左右の大きさがかなり違う。
・両方ともたてがみは、おかっぱ頭になっている。
・阿形のたて髪は、顔の横部分で前側にカールさせていて、吽形のたて髪は、縄状に編んである。
・吽形には角がある。
・顔は、眉や牙が明確に刻まれているが、阿形と吽形では造作がかなり異なる。
・ユーモラスな顔で、表情は親しみやすい笑顔である。
・前足は、前足は短く直立している。
・後足は蹲踞。
・尾は、阿形が一本の尾の付き尾。吽形は3条にわけながら縄状に背にそって立ちあがっている。
左右とも台座は一体で厚さも揃っている。
問題は吽形のみ基壇に載っていて、その基壇には、嘉永2年(1849)の銘がある。

この基壇が吽形狛犬のものであれば、対の狛犬ではなく別物と考えることになる。
しかし、この基壇は「奉」の字のみであり、この基壇にこだわるともう一つの狛犬が存在することにつながってしまう。
吽形狛犬があまりに小さいので、高さを近づけるためにどこかから余っていた基壇を持ってきたと考えたほうが良いのではないか。
阿形と吽形の顔の造作がかなり違い、尾の形も違うので、対として造られたと思うには無理がある。
吽形の方が新しいものと見える。
「母子」とはよく言ったもので、子であるから後から生まれたのが当然である。
阿形狛犬の身体に年号が彫られていて、これは間違いないので、阿形狛犬の年号によることにした。
「越前禿(えちぜん かむろ)型」というのは、狛犬研究家の鐸木能光氏が提唱している名で、他に「三国湊狛犬」とか「白山狛犬」とも呼ばれる。
越前(現在の福井県)には、笏谷石という細工しやすい柔らかい石を産出する場所があった。色は青白く、古くは
古墳時代の石棺などにも使われているそうである。
その笏谷石加工品のひとつとして、従来は木造が中心だった神殿狛犬が、石でも造られるようになった。
笏谷石を使った小型の石造狛犬の特徴は、おかっぱ(禿)頭である。他に、両肩に小さな翼が彫られ、お下げ髪風のたてがみの先が内巻きにカールしていること、牙や眉を明確に刻み込んでいることなども共通している。
海路を使って、日本海沿岸に分布しているのは、容易に想像できるが、青森県弘前市、京都府、愛知県岡崎市、岐阜県安八郡でも確認されているそうだから面白い。
越前禿型狛犬は、もともとは参道に置かれていたのではなく、木彫狛犬の代わりとして社殿内に置かれていたもののようだ。その意味では、神殿狛犬と参道狛犬を結ぶ貴重なリンクの役割を果たしたのかもしれない。
狛犬の記事一覧を見る
撮影日:2016年8月2日
年代:享保11年(1726)
材質:石造
型式:越前禿(えちぜん かむろ)型
昨年の8月に青春18キップで敦賀の越前一之宮・気比神宮に参拝したが、境内には江戸時代の狛犬が三組あり、その全てが越前禿(えちぜん かむろ)型だった。
その中で、一番古いのが今回のもの。
気比神宮については、記事があります。
その記事を見る
兒宮

この狛犬は、左右の大きさがかなり異なり、「母子狛犬」と呼ばれている。

右側の阿形



享保11年と、足に刻まれている。

左側の吽形



特徴:
・右側が阿形、左側が吽形で、左右の大きさがかなり違う。
・両方ともたてがみは、おかっぱ頭になっている。
・阿形のたて髪は、顔の横部分で前側にカールさせていて、吽形のたて髪は、縄状に編んである。
・吽形には角がある。
・顔は、眉や牙が明確に刻まれているが、阿形と吽形では造作がかなり異なる。
・ユーモラスな顔で、表情は親しみやすい笑顔である。
・前足は、前足は短く直立している。
・後足は蹲踞。
・尾は、阿形が一本の尾の付き尾。吽形は3条にわけながら縄状に背にそって立ちあがっている。
左右とも台座は一体で厚さも揃っている。
問題は吽形のみ基壇に載っていて、その基壇には、嘉永2年(1849)の銘がある。

この基壇が吽形狛犬のものであれば、対の狛犬ではなく別物と考えることになる。
しかし、この基壇は「奉」の字のみであり、この基壇にこだわるともう一つの狛犬が存在することにつながってしまう。
吽形狛犬があまりに小さいので、高さを近づけるためにどこかから余っていた基壇を持ってきたと考えたほうが良いのではないか。
阿形と吽形の顔の造作がかなり違い、尾の形も違うので、対として造られたと思うには無理がある。
吽形の方が新しいものと見える。
「母子」とはよく言ったもので、子であるから後から生まれたのが当然である。
阿形狛犬の身体に年号が彫られていて、これは間違いないので、阿形狛犬の年号によることにした。
「越前禿(えちぜん かむろ)型」というのは、狛犬研究家の鐸木能光氏が提唱している名で、他に「三国湊狛犬」とか「白山狛犬」とも呼ばれる。
越前(現在の福井県)には、笏谷石という細工しやすい柔らかい石を産出する場所があった。色は青白く、古くは
古墳時代の石棺などにも使われているそうである。
その笏谷石加工品のひとつとして、従来は木造が中心だった神殿狛犬が、石でも造られるようになった。
笏谷石を使った小型の石造狛犬の特徴は、おかっぱ(禿)頭である。他に、両肩に小さな翼が彫られ、お下げ髪風のたてがみの先が内巻きにカールしていること、牙や眉を明確に刻み込んでいることなども共通している。
海路を使って、日本海沿岸に分布しているのは、容易に想像できるが、青森県弘前市、京都府、愛知県岡崎市、岐阜県安八郡でも確認されているそうだから面白い。
越前禿型狛犬は、もともとは参道に置かれていたのではなく、木彫狛犬の代わりとして社殿内に置かれていたもののようだ。その意味では、神殿狛犬と参道狛犬を結ぶ貴重なリンクの役割を果たしたのかもしれない。
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コメント
No title
四季歩さん、こんにちは
ここの狛犬もいいですねえ! 保存状態も良いですし。特に、下の方のライオンみたいな感じのが面白いです。
それにしても、野天ではなく、屋根の下にあるのも面白いですね。以前に行った坂本の日吉大社の幾つかのお堂のひさし部分に木製の狛犬が置かれていたことを思い出しました。
ここの狛犬もいいですねえ! 保存状態も良いですし。特に、下の方のライオンみたいな感じのが面白いです。
それにしても、野天ではなく、屋根の下にあるのも面白いですね。以前に行った坂本の日吉大社の幾つかのお堂のひさし部分に木製の狛犬が置かれていたことを思い出しました。
matsumoさん
コメントありがとうございます。
狛犬も、ところ変われば品変わる、で
各地に面白いものがありますね。
坂本の日吉大社には、来週の22日に
参拝予定です。
もちろん狛犬も大変楽しみにしています。
狛犬も、ところ変われば品変わる、で
各地に面白いものがありますね。
坂本の日吉大社には、来週の22日に
参拝予定です。
もちろん狛犬も大変楽しみにしています。