春山之霞壮夫(はるやまのかすみをとこ)/日本の神々

20170513

『古事記』に登場する神。
帰化人の出石族が伝承していた説話にもとづく神話に登場する。

『古事記』の「応神天皇」の巻、9「秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫」の段
 (現代語訳)
さて、この伊豆志の神の女(むすめ)で、名は伊豆志哀登売神(いずしをとめのかみ)という神がおられた。ところで多くの神々が、この伊豆志哀登売を妻に得たいと望んだが、だれも結婚することができなかった。
ここに二柱の神があって、兄は秋山之下氷壮夫(あきやまのしたびをとこ)といい、弟は春山之霞壮夫(はるやまのかすみをとこといった。
そしてその兄が弟に向かって、「私は、伊豆志哀登売を妻に願ったが、結婚できなかった。おまえはこの少女(おとめ)を妻にできるか」と言った。弟が答えて、「たやすく妻にすることができます」と言った。そこでその兄がいうには、「もしもおまえが、この少女を娶る(めとる)ことができるならば、私は上衣と袴を脱ぎ、身の丈を計って、それと同じ高さの甕に酒をかもし、また山や河の産物をことごとくととのえ準備をして賭の物としよう」といった。
そこでその弟は、兄の言ったとおりくわしくその母に伝えると、即座にその母は藤の蔓を取ってきて、一夜の間に、上衣・袴および 磯・沓を織り縫い、また弓矢を作って、その上衣や袴などを弟に着せ、その弓矢を持たせて、その少女の家に行かせると、その衣服や弓矢はすべて藤の花に変化した。そこでその春山之霞壮夫は、その弓矢を少女の家の厠に掛けておいた。そこで伊豆志哀登売はその花を見て不思議に思い、それを持って来るとき、霞壮夫はその少女のあとについて、少女の家にはいるとすぐに契りを結んだ。そして一柱の子を生んだ。そして弟はその兄に、「私は伊豆志哀登売を自分のものにした」と申した。
 そこでその兄は、弟が少女と結婚してしまったことに腹を立てて、例の賭の品物を渡そうとしなかった。そこで弟が嘆いてその母に訴えたとき、母親が答えていうには、「この現世のことは、よく神の教えを見習うべきです。それなのに兄は、現世の人々のやり方に見習ったのでしょうか、その賭の物を償おうとしないのは」といって、その兄である子を恨んで、すぐに出石川の中州に生えている一節竹を取って、編み目の荒い籠を作り、その川の石を取って塩にまぜ合わせてその竹の葉に裹(つつ)んで、弟に呪詛させて言うには、「この竹の葉が青く茂るように、この竹の葉がしおれるように、茂ったりしおれたりせよ。またこの塩の満ちたり干たりするように、生命力が満ちたり干たりせよ。またこの石が沈むように病に沈み臥せ」といった。このように呪詛させて呪いの品を竈の上に置いた。このためにその兄は、八年もの長い間、体はひからびしなえ、病み衰えた。それでその兄が嘆き悲しんで、その母親に許しを乞うと、母親はすぐにその呪いの品を取り返させた。そしてその兄の体は、本どおりに安らかに健康になった。これが「神うれづく」という言葉の起りである。

以上が『古事記』の記述である。

この「応神天皇」の巻では、最初に「天之日矛(あめのひほこ)の渡来」を載せ、次いで帰化人の出石族が伝承していた説話にもとづく話を載せている。

弟の神が少女と結婚するのは、末子成功説話の形式をとったものである。
兄の名が秋山の紅葉を表わし、弟の名が春山の霞を表わしているところに、春秋の自然美の優劣を競う意味がうかがわれる。

春山之霞壮夫が弓矢を少女の厠にかけ、その少女と結婚する条は、三輪のオホモノヌシノ神が丹塗矢となって、厠にいるセヤダタラヒメの女陰をつく丹塗矢型説話の変形である。

母親が弟のために呪いの呪物を作り、弟に呪いの言葉を教えたことが記されていて、呪祖の方法が、具体的にくわしく語られているのが特色。
そして神の世界と人間の世界とを比較して、人の世となって約束を履行しなくなった、と母親に言わせている。



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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

日本神話って、兄が弟を虐める話って、大国主と兄たち、海彦山彦等、結構、多いですよね。これって、当時は長子相続ではなかったことと関係あるのでしょうか。

matsumo さん

コメントありがとうございます。
絶対権力者と、単なる冷飯食いの違いは
大きいですからね。
長子相続なんてのは、やっと家光の時から
ですよね。
それも秀忠もお江与の方も弟を跡継ぎにと
思っていたのを、春日局の直訴で家康が
家光にしたんですから。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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