吉備武彦(きびのたけひこ)・御鉏友耳建日子(みすきともみみたけひこ)

20170809

『日本書紀』に吉備武彦、『古事記』に御鉏友耳建日子が登場する。

『日本書紀』景行天皇40年7月16日条によると、日本武尊の東征にあたって、その従者として吉備武彦と大伴武日連が付けられたという。また同年の是歳条によると、吉備武彦は途中で越国に視察のため派遣され、のち日本武尊と美濃で合流した。そののち日本武尊が病を得ると、吉備武彦はその遺言を伝える使者として景行天皇の元に遣わされたという。

一方、『古事記』景行天皇巻では、吉備臣らの祖の「御鉏友耳建日子(みすきともみみたけひこ)」が倭建命(日本武尊)の従者として東征に遣わされたことが記されている。

『古事記』の「景行天皇」の巻、「倭建命の東国征討」の段
(現代語訳)
 そこで天皇は、また重ねて倭建命に仰せられるには、「東方十二カ国の荒れすさぶ神や、また服従しない人々を平定し従わせよ」と命じて、吉備臣等の祖先の、名は御鉏友耳建日子(ミスキトモミミタケヒコ)という人を副えて遣わされる時、柊の長い矛を授けられた。
 それで、勅命を受けて東国に下って行かれるとき、伊勢の大神宮に参って、神殿を礼拝し、やがてその叔母の倭比賣(ヤマトヒメノ)命に申されるには、「天皇は、まったくわたしを死んでしまえばよい、と思っておられるからでしょうか、どうして、西の方の悪い人々を討ちに遣わして、都に返り上って来てから、まだ幾らも時が経っていないのに、兵士らも下さらないで、今度は更に東国十二カ国の悪者どもの平定にお遣わしなさるのでしょう。これによって考えますと、やはり私などはまったく死んでしまえ、と天皇はお考えになっておられるのです」と申されて、嘆き泣き悲しんで出で立たれるとき、倭比賣命は草薙剣をお授けになり、また袋をもお授けになって、「もしも火急のことがあったら、この袋の口をお開けなさい」 と仰せになった。
(以下省略)

吉備武彦と、御鉏友耳建日子が同一人物かという点については、御鉏友耳建日子について『古事記』で吉備臣等の祖先と断っていることから、可能性は高いと思われる。

吉備武彦の出自について『日本書紀』に記載はない。『新撰姓氏録』では、左京皇別 下道朝臣条・右京皇別 廬原公条で稚武彦命(第7代孝霊天皇皇子)の孫とし、右京皇別 真髪部条では稚武彦命の子とする。

子については、『日本書紀』景行天皇51年8月4日条において、娘の吉備穴戸武媛が景行天皇(第12代)の妃となって武卵王(たけかいごのきみ)と十城別王(とおきわけのきみ)の2子を産んだと見える。また『日本書紀』応神天皇22年9月10日条・『日本三代実録』元慶3年(879年)10月22日条では、子として浦凝別(苑臣祖)・御友別(吉備臣祖)・鴨別(笠臣祖)・兄媛(応神天皇妃)らの名が記されている。

また『新撰姓氏録』右京皇別 廬原公条では、景行天皇の時に稚武彦命の孫の「吉備建彦命」は東方に派遣され、毛人を討って「阿倍廬原国」に到ったのち、天皇に復命した日に廬原国を賜ったとする。

ここで、倭建命自身が吉備下道臣の女性を母に持っていることに注目したい。
『古事記』で、12代景行天皇が、吉備臣等の始祖若建吉備津日子(ワカタケキビツヒコ)の娘針間之伊那毘能大郎女(ハリマノイナビノオオイラツメ)を娶って5名の皇子が生まれ、その3番目が倭建命だと記している。
ここに登場する吉備臣等の始祖若建吉備津日子は、『古事記』の「孝霊記」に、「若建日子吉備津日子命は吉備の下道臣と笠臣の始祖」とある、若建日子吉備津日子命と同じ人物であると解釈してよいと思われる。

この御鉏友耳建日子、あるいは吉備武彦が吉備下道臣の一族かということについては、「吉備臣らの祖」とあるだけなので断言はできないが、その可能性は高い。



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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

私の場合、吉備と言うと、どうしても、吉備津神社や大きな古墳を思い出しますね。吉備は1つの国であったと思いますが、おそらく、大和に征服させて、その名残りが日本書記に残っているのだと思いますが。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
例えば、大和地方には出雲族と吉備族が進出していた。
そこに天孫族が九州からやってきて(神武天皇の東征)、
征服した。
一時期の大和政権の天皇の后は、おしなべて吉備出身の
女性だった時期があります。
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Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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