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庚申信仰と庚申塔について

20170824

各地の史跡めぐりをする中で、庚申塔にいつしか関心を持つようになった。
私の住んでいる埼玉県狭山市にも15基の庚申塔があり、市内の史跡めぐりのガイドをする機会も多くて、庚申塔について勉強をするうち、庚申塔の魅力にどっぷり浸かってしまった。
けっこうデータも溜まったので、これから摂ブログにアップしていこうと思います。
ただし、私が主として関心が高いのは庚申塔の「像容」なので、それを中心に記事としていきます。
なので「文字塔」は対象としては省いてあります。

【庚申信仰】
 庚申信仰は3世紀ごろ中国の道教徒の間に生まれた民間信仰の1つです。
それによると人の体内には三尸(さんし)という虫が棲んでおり、60日に1度の庚申の夜に人が寝静まると秘かに体内から脱け出して天に昇り、天帝にその人の罪科を告げて寿命を縮めるというものです。
 そこで庚申の晩は三尸が天帝のもとに行けないように、眠らずに身を謹んで静かに一夜を過ごす「守庚申(しゆこうしん)」という習慣が生まれました。この習慣は仏教とともに我が国へ伝えられ、平安時代には朝廷貴族の間で、「庚申(こうしん)の御遊(ぎょゆう)」と呼ばれる全く異質である遊興の場に変化し、その後武家社会にも広がりました。
 しかし室町時代になると仏教の影響を強く受け、阿弥陀如来などの諸仏を礼拝(らいはい)して夜明かしをするという「庚申待」へと変化しました。またいつしか、伝尸(でんし)は三尸と関係があると考えられ、伝尸病(結核)の加持祈祷の本尊である青面金剛が庚申待の諸仏に加えられるようになました。
 江戸時代になるとその信仰は農民層にまで広がり、各地に庚申講という同信者の集団が結成されました。彼らは庚申の晩に宿に集まり眠らぬように努めましたが、そうしたなかで交わされる会話は最大の関心事である農業や日々の暮らしの行く末でした。その結果、庚申信仰はしだいに五穀豊穣や二世安楽を祈る信仰へと姿を変え、互いに金銭を出し合って庚申塔を建てるようになりました。

1)庚申信仰の伝来
・空海(弘法大師)が、延暦14年(795)に著した『三教指揮』で、道教について詳しく書かれていて、「庚申信仰」もこのころ伝えられていたと思われる。
・天台僧・円仁(第三代天台座主、慈覚大師)が記した『入唐求法巡礼行記』の承和五年(838)11月の記述。
「廿六日夜人咸(みな)睡らず本国(日本)の正月の庚申の夜と同じ也。」

2)朝廷の信仰(行事?)
・庚申の日に徹夜をする習俗は、朝廷行事の一つと考えられ、当時の記録に「庚申の宴」としばしば記される。
 『和漢朗詠集』(寛弘九年(1012)/藤原公任編集)に 「庚申」の項の詩文あり。

3)関東武士の信仰
『吾妻鏡(東鑑)』建暦3年(1213)3月19日条に「今夜御所二庚申ヲ守り御会有り」、「半夜(夜半の意か)ニ及ビ、甲胃姿の武士五〇人余が和田義盛邸あたりを徘徊していたので、用心のため御会は中止された」とあり、「庚申
ヲ守り」と記すだけで解説なし、つまり常識となっていた。「勝会を半夜で中止した」とあり、徹夜か鶏鳴まで続け
ることを承知していた。しかも「勝会」というほど多くの人が集まっていた。
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4)三尸(さんし)
中国・道教の関係で葛洪(かっこう)の『抱朴子』(ほうぼくし)(303~17完成)内篇巻六「微旨」 (微妙な教えの意)の記述「人間の体内には三尸がいる。三尸には形はないけれども実は霊魂や鬼神のたぐいで、人間の生命を奪うことを目的としている霊的存在である。人間が死ぬと三尸は鬼となって勝手に遊び歩いたり、祀りをうけたりできるので、人間がはやく死ぬことをのぞみ、庚申の日ごとに天に上っていって人間の過失を司命の神に告げる。」

【庚申塔像容の要素について】
1)塔身の形式
  角柱型、舟形向背型、駒形向背型などがある。

2)主尊
非定型型、三猿型、青面金剛型がある。
a)非定型型
初期の頃は、仏教の影響から阿弥陀如来などの諸仏を礼拝(らいはい)して夜明かしをするという
「庚申待」の時代。従って地蔵像など様々な形がある。
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b)三猿型
「庚申」からの猿、「庚申待」の動機から「見ざる、聞かざる、言わざる」
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c)青面金剛型
いつしか、伝尸(でんし)は三尸と関係があると考えられ、伝尸病(結核)の加持祈祷の本尊である
青面金剛が庚申待の主尊となったもの。
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※『庚申縁起』『陀羅尼集経(だらにじっきょう)』には、伝尸病(=結核)を患った人が
青面金剛の姿を思い浮かべ、千遍呪文を唱えれば治ると書かれている。

※『陀羅尼集経(だらにじっきょう)』の「大青面金剛呪法大呪法」に書かれた像容は、 「四本の手で向って左は上の手に三叉の矛を、下の手に棒を持ち、右は上の手に輪宝を、下の手に羂索(縄)を持つ。
身体は青色で口を開き、牙を出し、三眼で頭に髑髏をいただき、髪は火焔のように逆立ち、頚に大蛇を掛け、両腕に二匹の龍、腰と両足に二匹の蛇がまといつき、持った棒にも蛇がまといつく。
 腰には虎の皮を巻き、髑髏の首飾り・胸飾りをつけ、両足で一匹ずつ鬼を踏む。
 左右には一人ずつ童子を作る。頭には二つの暫を結び手に柄香炉を持つ。
 像に向って右に赤色と黄色、左に白色と黒色の恐ろしい形の夜叉を作る。」と説く。

※この像容は、寺における木彫仏像では具体化できるが、私たちが探訪する石像では正確に彫ることは不可能で、かなり簡略化することになる。
寺の仏像
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3)日月の彫刻
月待との習合と説く人もいるが、ほとんどの像に刻まれているのをみると、基本的な信仰である太陽信仰と月(水を司ると思われていた)信仰だと思ったほうがよい。
「筋彫、浮彫」、「瑞雲あり、なし」、「日(太陽)が右、左」の別あり。
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4)脇侍
  「大青面金剛呪法大呪法」に書かれている像容のとおり、夜叉、童子、邪鬼が登場することがある。

東京都板橋区東光寺の庚申塔に彫られた「四夜叉」
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埼玉県狭山市水野の庚申塔に彫られた童子と邪鬼
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5)鶏
・庚申の次の日が「酉」なので、鶏が鳴けば庚申の夜が明けたということになる。
・鶏は多産なので尊ばれた。(ほとんどのものが雄鶏と雌鶏の番い)
*時を告げている鶏(東京都目黒・区民センター付近の庚申塔)
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6)蛇、髑髏の表現
「大青面金剛呪法大呪法」に書かれている像容に登場する。
「水」が切実な問題だったので、蛇は水神のお使いということで崇敬された。
髑髏崇拝は、チベット仏教、立川流(密教)くらい。「大青面金剛呪法大呪法」からである。

埼玉県狭山市石無坂庚申塔の蛇の表現
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東京都目黒・区民センター付近の庚申塔の蛇の表現
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東京都目黒・区民センター付近の庚申塔の髑髏の表現
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7)青面金剛の本手
青面金剛は、たいてい6本の手であるが、その中央の二本を「本手」という。
合掌しているものと、「剣とショケラ」を持っているものがある。

合掌しているもの
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「剣人型」
右手に剣を持ち、左手でショケラをぶら下げている。
東京都文京区大円寺の庚申塔
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「ショケラ」=半裸の女人
(一部の地域では、こういう文化財を管理しているのが教育委員会で、教育上考えたのか「童子」としていることがある)
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庚申信仰の特色の一つは禁忌(タブー)が多いこと。
その中でも特に厳しいのは庚申の日の男女同衾である。

川柳にあり。
  ・寝て用が ないで庚申 夜をふかし
  ・庚申を うるさくおもう 新世帯
  ・御帰国の 日も折り悪し かのえ申

男女同衾または同様の所業をした女人を懲らしめる形ではないかと推論されている。
女性が半裸であることがそれを裏付ける。

*女性が合掌しているもの ⇒ 魔から救い出している

※ショケラという言葉について:
・定説が無く、各説が入り乱れている状況であり、比較的納得できるものを挙げました。
・「三尸虫」すなわち「尸虫」の訓読みは「シャクタレ虫」だった。
・袋草紙などでは「しやくむし」であり、「く」には「具」のくずし字が用いられていた。
 「具」を極端に崩すと二文字のように見え、「けら」と誤読される。
・「しやけら」⇒「ショウケラ」⇒「ショケラ」
三尸虫は形が無いので、庚申塔に刻まれるときに「擬人化」された。

(了)


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

なるほど、庚申塚は私にとっては単なる写真の対象ですが、その奧には歴史と言うか、私が知らないようなことが沢山、あるのですね! 古そうな庚申塚、私の家から200m位の所にもあります。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
関東には、とても庚申塔が多いです。
江戸時代に盛んだった民間信仰なので、歴史を
楽しむ立場としては見逃せません。
これから、色々な庚申塔を紹介していきます。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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