哄う合戦屋/北沢 秋

20100130

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哄う(わらう)合戦屋、という風変わりな題の小説が新聞の広告にたびたび載っており、興味を引いたので購入して読んだ。

作者は東大工学部卒で、会社員生活を経て作家となり、この本がデビュー作だという。

私の興味を引いたのは、新聞に載っていた、こういう紹介記事であった。
武田と長尾に挟まれ、土豪が割拠する中信濃。
山深い名もなき城に、不幸なまでの才を持つ孤高の合戦屋がいた。
「もはや拙者には、富貴もいらぬ、栄華もいらぬ。願うはただ、殿を天下人にすることのみである。

誰もが知っているように、この辺は武田信玄が斬り従え、上杉謙信と川中島で戦い、そしていよいよ上洛途上で信玄の夢はついえた。
その歴史の中で、どういう位置をなす話なのか?

私が生まれて育った信州の佐久は、武田信玄がまだ晴信と言っていた若い頃に征服され、抵抗が激しかったため戦の後、見せしめに首が1000も並べられたという所である。
私と同じ苗字を持つ武将が、武田11将のなかにいることもあって、武田に関係する本はかなり集めてもいる。
だから、この本も読まずにはいられなかった。

私は、読み出してすぐにこの合戦屋「石堂一徹」なる人間に惹かれた。

例えば、こうである。
(紹介したこの場面も要約であり、実際の文章はもっと二人の心模様をもっと詳細に描いている。)
一徹が仕える殿には娘があり、その姫の名は若菜といった。
若菜は絵心もあって、襖絵に自分で絵を書き込んでしまう。
この襖絵は自分としては会心の出来で、これならば気難しい一徹も素直に感嘆してくれるのではあるまいか。
襖絵をしばらくじつと見詰めていた一徹は、やがて若菜の方に向き直ると無表情のままぽつりと言った。
「結構な絵でござる」
 しかしその言葉には軽い失望がこもっていることを、若菜は敏感に見抜いた。
 「うそ」
 若菜はそう言って、眼にきらきらとした光をたたえて笑った。
「石堂様は、この絵を気に入ってはおられませぬ。教えて下さいませ、この絵のどこに不満がございますのか」
一徹は本心を言ったものかどうかしばらくためらった後に、意を決したように若菜の顔を真っ
直ぐに見据えた。
「十日ほどの日時を下され。拙者の思いは、その時にお分かりになりましょう」

 それから八日後に、若菜に見せたのは白木の童女の像だった。
その姿は、右手に毯を載せて斜め上に視線を投げた姿勢といい、透き通るような無邪気な表情といい、若菜の襖絵とよく似ている。ただこうして比べてみると、自分の絵の童女はただひたすらに愛くるしいばかりなのに対して、一徹の木彫にはあどけない中にも凄とした気品があって、どこかおごそかなまでの深味が漂っている。
そこまでの精神性を十人歳の自分に求めるのは無理だということは若菜にも分かっていて、そのことはさして衝撃というわけではなかった。
だが二人の作品には、それ以上に根本的な差異があった。それは若菜の絵には母親の姿があり、一徹の木彫にはそれがないことであった。
さらにその木像を凝視していた若菜は、やがて、「あっ」という声を上げた。その童女の信頼に満ちたひたむきな視線の先に、向かい合う母親の姿が鮮やかに浮かんで見えてきたのである。

「姫の筆使いは、本職の絵師にも勝っておりましょう。しかし姫の絵には、その技巧が表に出てしまっております。どうだ、うまいだろうという気持ちが先に立ってしまっては、見る者を心底感服させることはできませぬ」
 背中に投げ掛けられた一徹の言葉に、若菜は唇を噛んだ。

「何事も、奥が深いものでございますね」
若菜が溜め息をついてそう言うと、一徹は濃い髭が覆う頼を僅かに緩めた。

「姫の絵が箸にも棒にも掛からぬものならば、拙者も大仰に褒めてそれでおしまいでござるよ」
おおいに見所があるからこそ、あえて本気で厳しい指摘をするのだと一徹は言いたいのに違いない。そしてこの男の言葉に込められた温かい好意は、初めから若菜にも通じていた。
僅か八日の間にこれだけの作品を完成させるためには、一徹は自分の時間のほとんどをこのために費やしたのであろう。それでは、一徹をそうした行為に駆り立てた動機は何だろうか。若い娘の常として、若菜もそこに男女の感情を一瞬思い浮かべたが、すぐに苦笑して首を振った。

石堂一徹は、武者としても優れていたが、何よりも頭脳である。戦術であった。
彼が持ち上げようとした主人は、彼の期待に沿ったのか。
彼がものすごいということは、その上に立つ殿も器が大きくなければならない。
そして若菜という姫は・・・・・・・
二人は、ついに夫婦になる約束をするのだが、この乱世の中で姫というのは政略に使われるのが当たり前である。
姫の運命は?

読んでもらうしかないですね(笑)

最後の60ページほど、途中で止められなくて一気に読んだ。
寝る前だったので、寝る時間が一時間半ほど遅れ、次の日会社で眠くて困った(笑)


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コメント

No title

石堂一徹さん、いい男ですね><;;
不器用といえるほど真っ直ぐな生き方を見るとますますカッコいいなあと。
凄い本をご紹介くださってありがとうございます。
近々、近くの平安堂(笑)で買ってみます。
それにしても長野県在住なのに、石堂一徹って全く知らなかった私って・・・。

たこさん

この本は、面白いと思いますよ。

石堂一徹、これは実在の人物ではないと思います。
もしかしたら、居たのかも知れませんが。

小説ですからね。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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