天地明察/その一「算額」の話

20100719

100719tenchi.jpg

作家「冲方丁(うぶかたとう)」の作品である。
この本の広告を朝日新聞で見たときには驚いた。
ずいぶん昔だが、SFを好んで読んでいたときがあって、日本SF大賞を取った「マルドゥック・スクランブル」という冲方丁の作品に惚れ込んで、他の作品を探したが「微笑みのセフィロト」という本が手に入ったのみ。
続く作品を待っていたが、いっこうに現れず、いつしか忘れていた名前だった。

それが紹介記事によれば、時代小説である。
またまた驚いた。

読み始めて夢中になった。
まだ読み終わっていない。残り少なくなってくると読み終わるのが寂しくなってくる。

この本を読み始めて、すぐに夢中になったことがある。
この本の主人公は「碁打ち衆」の一人「安井算哲」。「碁打ち衆」というのは将軍の前で「上覧碁」を打ったり、大名の碁の相手をする役目であり、常に本因坊家と覇を争っている安井家の総帥が「安井算哲」。
父親が急死したため、後を継いで総帥となったが、まだ若干22歳。
しかし、既に定石を打つのみの仕事に飽きてしまっている彼が夢中になっているのが「算術」。

物語の冒頭、江戸での定宿にしている会津藩屋敷から籠を飛ばして行く先は、渋谷宮益坂にある金王八幡。
そこにある「算術絵馬」を見るためだ。
誰かが算術の問題を絵馬に書いて吊るしておく。
それを誰かが解く。
その答えが合っていれば「明察」と出題者が書き込んで一件落着。
答えが間違っていれば「惜しくも」とか「誤謬なり」となる。

「算術絵馬」というものを知らなかった。
問題と答えを奉納した「算額」というものもあるという。
おおくは「幾何」であるらしい。生活に密接に関わってくるからだろう。
これに感心してしまった。
昔は「学会」なんて無かったからなあ。
おそらく、難しい問題が解けたことは神が助けてくれたのだと、感謝して奉納したことだろう。

私は、高校が「機械科」、大学も「機械工学科」という機械バカである。
数学は、研究対象でなくて利用するものだったが、数学の恩恵をかなり受けている。
今でも、自分では密かに誇りにしていることがある。
大学を卒業して会社に入り、初めてやらされた仕事がブラウン管の金型を加工するプログラムの仕事。
当時国内のテレビのブラウン管の70%を旭硝子が作っていたが、そのブラウン管製作用の金型を私の会社で作っていた。
ブラウン管の形状は三次元の複雑な形状であり、それまでは木型に倣って加工していた。
当時「APT」というコンピュータープログラム言語がアメリカから入ってきたばかりの時で、まずそれを習得させられた。
「Auto Programmed Tool」の略で、球面とか円筒とか平面などの図形を、まず定義し、その図形に沿って刃具を運動させるプログラムを組むと、コンピューターが刃具の運航していく座標をミクロン単位で出してくれるというものだ。
ところが、当時会社に置いてあったコンピューターでは、能力不足でこのプログラムを動かせない。
三菱グループの、まあまあの会社だったが、そうなのである。
当時日本橋宝町にIBMセンターがあり、そこに日本でここにしかない、当時ではスーパーコンピューターにかけることになり、プログラムを組んではIBMセンターに行き、まずはプログラムのデバッグ(虫食い)をして、プログラムを確定してからアウトプットを得る、という仕事をしていた。
そして、私が組んだプログラムで得られたデータで動くマシニングセンターで、加工された金型で作られたブラウン管が組み込まれたテレビが各家庭で活躍していた時代が確かにあったのだ。
これは誇らしかったし面白かった。幾何学の助けを大いに受けた。


で、「算術絵馬」とか「算額」は、いまでも見られるのだろうか?
渋谷宮益坂にある金王八幡に行けば見ることができるだろうか?
ぜひとも見たくなった。
まずは、ネットで調べてみた。
金王八幡は確かでなかったが、それより前にずいぶんと「川越の算額」が引っ掛かってくるではないか。
埼玉県の川越は私が住んでいるところの近くである。
いまでも「小江戸」と呼ばれるくらい、江戸と関係が深かった土地である。
川越には「算額」が奉納された神社が5ケ所あるという。
しかし、保護のためたいてい市とかが保管してあり、いまでも神社に掲げられているのは一つだけ。
すぐに飛んで行ったのだが、残念なことにお宮さん全体が板で囲われていて見ることが出来なかった。
悄然と引き揚げてきたが、いずれ見るチャンスはあるだろう。
どんな「算額」なのかは、いろいろなサイトで紹介されているので、そこから頂いてきた情報で、ここでは紹介しておこう。


1.川越 久下戸氷川神社の算額100719sangaku01.jpg

  どういう「算額」なのかは、この写真でわかりますが、書かれていた問題は今では読み取ることが
  難しいようです。


2.川越 古尾谷八幡神社の算額
100719sangaku02.jpg

(問題文)
左の問題は、傍斜の等しい台形を斜めに二分した両三角形に、各々円を内接させて
乾円、坤円とし、上底9寸、乾円の直径7寸、坤円の直径4寸とした時、下底の長さを
求めよ
右の問題は、矩形の中に5つの円を内接させ、木円の直径を17寸としたときの、水円
の直径を求めよ

3.川越 藤宮神社の算額
100719sangaku03.jpg

(問題文) 
 今、図のように正三角形内に四円を容れたものがある。甲円径が三寸(9.9㎝)である時に、丙円径はいくらか求めよ。


4.川越 府川八幡神社の算額
100719sangaku04.jpg

 縦五十一センチ・横百四十三センチの大きさの算額は、額にはった紙に三間の答えと術を示してあり、その下に六十三人の門人名が記してあります。
 もう一つの算額は大きさが縦六十六センチ・横九十センチで、右側が変形の絵馬型になっています。木の板に書かれ、五つの問いと術が載っていますが、文字がはがれ落ちていて三分の一が解読できない状態です。


5.川越八幡神社の算額
100719sangaku05.jpg

  神社に掲示されている算額を説明している案内文の写真です。
  これは、図がついているので、皆さんも読み取れると思いますので、
  特に説明はつけません。

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Author:四季歩
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写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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