ベニスに死す

20110117

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監督 ルキノ・ヴィスコンティ
原作 トーマス・マン
音楽 グスタフ・マーラー
出演
ダーク・ボガード:アッシェンバッハ
ビョルン・アンドレセン:タジオ
シルヴァーナ・マンガーノ:タジオの母
ロモロ・ヴァリ:ホテル支配人
マーク・バーンズ:アルフレッド
マリサ・ベレンスン:アッシェンバッハ夫人

1971年(昭和46年)製作・公開されたイタリア・フランス合作映画。

マーラーの交響曲第5番の第4楽章アダージェットは、もともとは作曲者が当時恋愛関係にあったアルマにあてた、音楽によるラブ・レターである。
この美しい旋律は、聴いていて琴線を揺らすことこの上ない。
これを使った映画があって、評判だということは知っていたが、まだ見てなかった。
このあいだ、マーラーの交響曲第5番を二度目に取り上げたとき、matsumoさんからこの映画についてのコメントがあり、やはり見なきゃなあと思ってアマゾンで検索したら、なんと980円で手に入りました(笑)

観たら、やはり良かったなんてものじゃないです。
素晴らしかった。

物語
1911年のべニス。
グスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は休暇をとって、ひとりこの水の都へやって来たドイツ有数の作曲家であり指揮者であった。

蒸気船やゴンドラの上で、さんざん不愉快な思いをしたグスタフは避暑地、リドに着くと、すぐさまホテルに部屋をとった。サロンには世界各国からの観光客が集まっていた。グスタフは、ポーランド人の家族にふと目をやった。
母親(シルヴァーナ・マンガーノ)と三人の娘と家庭教師、そして、母親の隣りに座った一人の少年タジオ(ビヨルン・アンドレセン)にグスタフの目は奪われた。
すき通るような美貌と、なよやかな肢体、まるでギリシャの彫像を思わせるタジオに、グスタフの胸はふるえた。その時からグスタフの魂は完全にタジオの虜になってしまった。
北アフリカから吹きよせる砂まじりの熱風シロッロによってべニスの空は鉛色によどみ、避暑にきたはずのグスタフの心は沈む、しかも過去の忌わしい事を思い出し、一層憂鬱な気分に落ち込んでいった。ますます募るタジオへの異常な憧憬と、相変らず、重苦しい天候に耐え切れなくなったグスタフは、ホテルを引き払おうと決意した。出発の朝、朝食のテーブルでタジオを見た、グスタフは決意が鈍った。だが駅に着いたグスタフは、自分の荷物が手違いでスイスに送られてしまったと知ると、すぐにホテルに引き返した。勿論グスタフの心は、タジオとの再会に、うちふるえていた。タジオへの思いをグスタフはもう隠そうともしなかった。タジオの行く所、いつも、グスタフの熱い眼差しが後を追った。タジオも、ようやく気づき始めているようだ。

しかしこの頃、べニスには悪い疫病が瀰漫しはじめていた。
街のいたる所に、消毒液の匂いが立ちこめ、病い冒され、黒く痩せ衰えた人々が、行き倒れになっていた。しかし、観光の街べニスにとって旅行者に疫病を知られることは死活問題であり、それをひた隠した。何とか聞き出したグスタフはそれが、真性コレラであることを知った。グスタフは、それでも、べニスを去ろうとはしなかった。
ただ、タジオの姿を追い求めて、さまよった。精神的な極度の疲労の中、肉体もコレラに冒され、浜辺の椅子にうずもれたグスタフの目に、タジオのあの美しい肢体が映った。海のきらめきに溶け込んでゆくかの如き、タジオの姿にグスタフの胸ははりさけんばかりとなり、最後の力をふり絞って差しのべた手も、遂に力尽き、息絶えた。


原作者トーマス・マンは、この小説を執筆するに当たって、主人公を老作家としていた。しかし監督のルキノ・ヴィスコンティは、原作者の真の意図を汲み、主人公の「グスタフ・アッシェンバッハ」をマーラーらしき人物に「再転換」している。また、同時代の作曲家であり、マーラーと親交のあったアルノルト・シェーンベルク(アルフレッド)をも登場させ、二人の「美」についての論争は、この映画全体に満ち溢れる「対比」の主体軸となっている。


だから、グスタフの回想にアルマだとすぐわかる女性、幼くして亡くなった娘が出てくるので、「グスタフ・アッシェンバッハ」と「グスタフ・マーラー」が嫌でも重なってしまう。
えっ、マーラーってベニスで死んだんだっけ?
と映画を観終わってから確認する始末だった。それはまったく違っていたが(笑)

なんとも美しい映画だ。
全篇に流れる感傷的なマーラーの五番の第四楽章のお蔭で、この作品は耽美の極みに観る者を浸らせる。
少年は、たしかに美少年だとは思ったが、私にはそれ以上のものではなく、やはりヴェネツィアの情景と「アダージェット」のからみが私を酔わせる。
なにしろ、次にまたイタリアに行くときには真っ先にヴェネツィアに行きたいと思っているのだから。
死にかけていくグスタフの目に見える、ピンクの光に染まったヴェネツィアの浜辺の美しいこと・・・・・
流れる「アダージェット」の旋律の美しいこと・・・・・・

余談
その後、アンドレセン少年が辿った道のりは非常に険しいものだったようです。
同性愛者のヴィスコンティ映画の主役の美少年ということで常に同性愛のレッテルを貼られ(ヴィスコンティが発掘した若者は彼の愛人である場合が多いので…)、会ったこともないアメリカ映画界の大物の同性愛者の愛人という噂が立ったり…、パパラッチに追い掛け回され、もうウンザリ!!と映画界から引退しますが、1977年あたりから出身地のスウェーデンでテレビなどに出始め、俳優、ミュージシャンとしてかなり地味にあまり人目に出ない程度に活動しているようです。
ネット時代となってから一気に情報が増え、「あの人は今?!」の常連らしく、この映画のことについてネットで調べているときには、この関係の記事の多いこと(笑)

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コメント

No title

懐かしい映画ですね~。

70年代後半の、早稲田松竹が名画座として賑わっていたころ、私もこの映画を観ました。マーラーの「アダージェット」という初めて聴く音楽に酔い、美しい映像にも感化されて、それからというものヴィスコンティ監督作品の映画が公開されるたびに、岩波ホールへと通ったものでした。いや~、懐かしい。これは私の青春の一ページです(笑)。

No title

四季歩さん、こんにちわ

おっ、「ベニスに死す」、ご覧になられたのですね。美少年の母親役の女優さん、いかがでしたか。あのしゃべり方と容姿、そして、服装、優雅さの極致だと思いますが。

確かに、あのマーラー、体格が良いので実物には似ていませんね。ケン・ラッセル監督の映画「マーラー」の方は、痩せていて、遙かにマーラー風です。こちらは晩年のマーラーが若い頃を回想するもので、アルマのほか、両親やコジマ・ワーグナーまでが出てきて、割と現実に即しています。

なお、ヴィスコンティ監督の「ルードウィッヒ、神々の黄昏」では、凛とした容姿のロミー・シュナイダーは勿論、素晴らしいですが、音楽家としてはワーグナーが出てくるので、クラシック音楽好きなものには興味深いです。

見直さないと

こんばんは

この映画は若い頃に見たことがあるのですが、
まるで分かりませんでした。

もしかしたらおじさんになった今ならそのよさ
に気づくかもしれません。

是非とも見直さないと。

コメントありがとうございます

fragile28さん
青春の思い出の映画ですか。
私は、見そこなっているんですよね。
もし見ていたら、もっと早くからクラシックが
好きになっていたことでしょう。


matsumoさん
母親の人、よかったですね。
まだどんな人なのか、他の出演など
調べていませんが、これから調べて追いかけようかな。
「ルードウィッヒ、神々の黄昏」、これもまた
名前だけは知っていますが、まだ見ていません。
これも近いうち、見たいですね。


メタボパパさん
そうですね。
そうかもしれません。
年齢を重ねて見えてくるもの、確かにあります。

私の経験でもそうですね。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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