テンペスト/池上永一

20110321

上巻 「若夏(うりずん)の巻」
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下巻 「花風(はなふう)の巻」
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あらすじ:
誰よりも聡明な少女・真鶴は、女であるというだけで学問を修められないことを不公平に思っていた。跡継ぎと目されていた兄の失踪を機に、宦官・孫寧温と名乗り、性を偽って生きていくことを誓う。
科試に合格した寧温は、王府の役人として、降りかかる難題を次々と解決し、最速の出世を遂げていく。
そんな寧温を阻む、数々の敵。遂に謀反人として八重山に流刑にされた寧温は真鶴に戻り、九死に一生を得る。その類稀なる美貌と才覚を見初められ、自分の意思とは裏腹に王の側室として王宮へ返り咲くこととなる。

平穏な生活はペリーの来航により風雲急を告げる。外交に長けた人物として、八重山にいる(と思われている)孫寧温に王府へ戻るよう王命が下る。昼間は宦官の役人、夜は側室と、真鶴は一人二役をこなさなければならなくなってしまう。


登場人物
真鶴(まづる)= 孫寧温(そん ねいおん):
孫家待望の第一子として誕生したが、男児を強く望んでいた父親はショックのあまり、名前を付けず、いない者として存在を無視されて幼少時代を過ごす。名前は3歳になった頃に自分で付けた。仕出し係として宣教師ベッテルハイムに食物を届けていた時に、英語やドイツ語など計13カ国語を習得した。
「孫寧温」は父親が生まれてくる男児のために考えた名前。13歳にして科試に宦官ということで受け、最年少合格してしまう。評定所筆者主取に任命され、財政構造改革を断行する等功を上げ、重役となる。女を捨てていたはずだが、浅倉雅博に恋心が芽生える。徐丁垓に女であることを見破られるが琉球を救うため徐丁垓を討つが、彼が仕掛けた周到な罠で謀反人の疑いをかけられ、八重山へ流刑となる。
後に王の側室として王宮へ戻る。

孫嗣勇(そん しゆう):
真鶴の義兄。男子が欲しかった真鶴の父親が実姉の三男を養子にもらった。父親からの厳しいしごきに耐えかね、失踪してしまう。その後、辻の遊郭で踊奉行に徴発(スカウト)され王宮の踊童子になる。花当となり寧温と再会。体を張って寧温を守る。

喜舎場朝薫(きしゃば ちょうくん):
6歳にして四書五経を読んだ神童として名を馳せた。寧温のよきライバル。科試に首席合格し、評定所に配属される(寧温が上司)。宦官である寧温にときめき、戸惑いを隠せない。

浅倉雅博(あさくら まさひろ):
薩摩藩御仮屋詰めの武士。琉歌を詠むのが上手い。寧温のことを好きになる。御仮屋の役人の中では穏健派。職を辞し、真鶴に戻って市井に紛れていた真鶴に心を奪われ求婚するも運命のいたずらか、引き裂かれてしまう。

儀間親雲上(ぎまペーチン):
北京の国子監に留学していた。派手好きな男。雅やかな所作を身に付けている。「琉球の在原業平」と異名を取る風流人。かつては科試受験を目指していたが、父親が楽をさせようと賄賂を贈って留学することになった。寧温との出会いで一念発起し、科試を再受験、合格し、銭蔵奉行に配属となる。

尚育王(しょういくおう):
第18代琉球国王。穏やかな性格の美丈夫な青年。機会の平等を謳い、科試教育を徹底させる。古い慣例を打破する政策を次々と生み出した。寧温に財政改革を命じる。

尚泰王(しょうたいおう):
第19代琉球国王。父・尚育王急死に伴い、わずか6歳で即位、摂関政治となる。幼さゆえに、よく遊んでくれる徐丁垓を信頼してしまう。後に真鶴を側室として王宮へ引き止める。

真美那(まみな):
尚泰王の側室。真鶴が側室試験で出会った少女。聡明で真鶴以外に唯一教養試験を突破した。より聡明な真鶴に憧れ、親友となる。朝薫の従妹に当たる。生まれながらのお嬢様であり、その破天荒な行動は「お嬢様爆弾」と称される。

徐丁垓(じょ ていがい):
清国の宦官。宦官でありながら、紫禁城の後宮の女全員を抱いたとして追い出された。紫禁城から追い出すために冊封使節団に紛れ込まされた。自ら「女を抱くために宦官になった」と言うように、琉球の花街でも絶倫の好色漢として有名。清国では一応科挙に受かっただけあって、知性と情報力は備えているが、人格は腐りきっている。寧温の正体を見破り、脅迫し犯し、言いなりにさせ、遂には琉球乗っ取りを画策する。

明(めい):
真鶴の子。母親譲りの旺盛な知識欲を有する聡明な少年。真鶴手製の教科書であらゆる知識を吸収していく。自分が王族の血を引くことを知らない。


あらすじと登場人物紹介で、既におわかりだと思う。
これは「劇画」のようなものである。
おもしろかった、物凄く。
ただし、これを読む時には、エンターテイメントとして割り切って読まないと、肩透かしを食らってしまう。

琉球の歴史大河小説をだと思って期待すると、その「軽さ」とエンタメ重視の姿勢に、耐えられない人もいるだろう。
なるほど、琉球王国というのはそういう存在で、そういう「美」があったのか!と思わせる、知らしめさせる物語世界の美しさには、感動しました。

これは、いつか来た道と思ったら、「HERO」とか「LOVERS」とかの世界だよね。
チャン・イーモウ監督の映画が好きなら、おすすめだと思います。


この小説の中に挿入されている琉歌が彩りを添える。

つぼで露待ちゆる花の咲き出らば
      匂や誰が袖に移ち呉ゆが

(蕾で露を待つ花のおまえは、これから誰の袖に匂いをつけるのだろうか)


別れゆる袖に匂ひ移ちたばうれ
      面影の立たば伽にしやべら

(別れ際にあなたの袖の匂いを私に移してください。そうすれば思い出すときはいつでもあなたの袖の匂いを伽にして心を慰めましょう)

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コメント

No title

四季歩さん、こんにちわ

上記の本、読んだことはありませんが、「テンペスト」と言う表題から、てっきり、シェイクスピアの戯曲を翻案した小説かと思いましたが、どうやら、全く違うようですね。「嵐」と言う意味だけを使っているのでしょうか。歴史小説と言うより、伝奇小説に分類されるもののような気がしました。

matsumoさん

コメントありがとうございます。

伝奇小説とまではいってないと思いますが、
そっちよりではありますか(笑)

面白いですよ。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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