中原の虹/浅田次郎

20110528

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中国の歴史小説は、どうしてこうも面白いのだろう。
折にふれて何度も読み返しているのは、北方健三の「三国志」、「水滸伝」。
その「水滸伝」の続編「楊令伝」15巻を読み終わってしまった。
その脱力感のなかで、思い出したのがどこかで推薦されていた、この本である。
しかも時代が、ラストエンペーラーの直前という、私にとってはかってどんな本でも読んだことのない時代であって、そういう意味でも新鮮に読み始めることが出来た。

どうもこれは、つい最近テレビで放送していたのだが私はどういうわけか見る機会がなかった「蒼穹の昴」の続編らしい。が、それはかまうものか、これを読んで面白かったら、遡るかたちで「蒼穹の昴」も読めばいいのではないかと読み始めた。
そしたら実に面白い。

舞台は清朝末期の光緒33年(明治40年、1907年)から民国5年(大正5年、1916年)6月の中国。海外列強により蚕食されつつある状況を憂いた西太后は、かつて幽閉した光緒帝と共謀して自身の手で清を滅ぼすことを決意。落日を迎える清朝に代わり覇権を握らんと各地の軍閥がしのぎを削る中、占い師に王者となると予言された馬賊の張作霖は、己の野望を叶えるために苛烈な戦いに身を投じる。その戦いは、彼に従う李春雷や周囲の人間たちの運命を大きく変えていくことになる。


まず、張作霖って聞いたことあるけど誰だっけ、である。
よっぽどウィキで調べようかと思ったが、我慢した。たぶんそのほうが新鮮に読める。

新たな登場人物達を占い師の老婆「白太太」がいちいち占っては先行きを示してくれるという紹介が続くので、ちょっと笑ってしまった。面白い趣向である。


馬賊の李春雷は、張作霖に大金で買われ、二人は中国を統べる者が持っているという伝説の「龍玉」を探しに行く。そして「龍玉」を掘り当てるのだが、このあたりの描写には一気に魅了された。
そして探し出した「龍玉」をポンと自分の息子(張学良)に与えてしまう。これにも参った。

氷雪吹きすさぶ過酷な満州の大地の描写がすごい。
そこを馬で駆けまわる馬賊の生活はやはりジンギスカンとかヌルハチをほうふつとさせる。
その、清の太祖、満州国のヌルハチが、勇敢な軍勢で満州を制圧し、その息子達は更なる平安を求め、長城を挟んだ明国との戦いに挑むという話も登場してくるから、いやいや本当にスケールの大きい悠久の時を刻む物語になっている。

もう一つの軸として李春雲と兄の春雷の物語がある。貧しさのために、兄は弟と家族を捨てて命を張って金を稼ぐ馬賊になり、春雲は男の一物を切りとって宦官になる。普通に家族みんなで生き延びることが出来ないくらいの貧しさが蔓延する国で、春雲は西太后の側近となり、春雷は東北王と呼ばれ慕われる張作霖の部下になり、
立場は全く違えども、彼らはいつのまにかその国を動かす立場に立っていて、やがて二人は再会する。

出てくるキャラクターはみんな魅力的。これは浅田次郎のうまさなのだが、新キャラクターが登場し、その人物について2~3ページも読むと読者はすっかりファンになってしまう。とにかく人物描写が巧みで、一つ一つの台詞に血が通っている。
龍玉の伝説のくだりとか、ヌルハチの統一に向けた戦闘シーンとかが現れてくるのは、まるでファンタジーでもあり、ストーリーは平易だが、美しく、テンポ感があり、どんどん読み進むことができるのがいい。


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コメント

No title

四季歩さん、こんにちわ

全15巻の小説ですか、ううん、長いですね! 最近、私が読んでいるものは、長くてもせいぜい、本2冊で、15冊もの根気が続きません。もっとも、数だけは読んでいますが。

張作霖って、日本史の授業で習いましたが、確か、関東軍と関係があった馬賊・軍閥で、陰謀で爆死と言う人ですね。この手の人にまともな人はいないので、殺されても仕方がないと思っています。

matsumoさん

コメントありがとうございます。
私は、まともじゃない人を好きになるようです(笑)
「水滸伝」もそうですから。
まともじゃないというのは、この場合
体制側に組してうまい汁を吸うんじゃなくて、
体制に反発して、それに逆らう義侠心を持った
人間を言いますが。

No title

こんにちは。

昨年「中原の虹」を読みました。
「蒼穹の昴」の続編なんですが、僕はこちらから読みました。

張作霖や西太后などの傑物ぞろいですし、清朝の建国の物語とあわせて語られるので、二重の楽しみがありました。

よんさん

コメントありがとうございます。
いやあ、思い出しました。
この本は、よんさんの記事を読んで
読みたくなったのでした。
「天地明察」もそうでした。
いつもいい本を教えてくださり、
感謝しています。
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四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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