ダ・ヴィンチの白鳥たち/カレン・エセックス/那波かおり訳

20111229

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久しぶりに、読んでいてわくわする面白い小説に出会った。

アマゾンのキャッチコピーはこうなっています。
あの日、マントヴァからの求婚の使者が少しでも遅れていたら、あるいはミラノからの使者の馬が駿馬であったなら、世界地図はまったく違った色に塗り替えられていたかもしれない…。15世紀、ルネサンスのイタリアを舞台に、歴史に翻弄される、イザベラ・デステとその妹ベアトリーチェの美しき姉妹の愛憎と数奇な運命とを描く、歴史ロマン超大作。

~主な登場人物~
イザベラ・デステ:エステ家姉妹の姉。マントヴァ候妃。
ベアトリーチェ・デステ:イザベラの妹。ミラノ公の摂政の妻。のちのミラノ公妃。
フランチェスコ・ゴンザーガ:マントヴァ候。イザベラの夫。
ルドヴィーコ・スフォルツァ(イル・モーロ):ミラノ公の摂政。のちのミラノ公。ベアトリーチェの夫。
チェチリア・ガッレラーニ:ルドヴィーコの愛人。
ルクレツィア・クリヴェッリ:ベアトリーチェの女官。ルドヴィーコの愛人。
ジャンガレアッツォ・スフォルツァ:ミラノ公。ルドヴィーコの甥。
“アラゴンのイザベラ”:ミラノ公妃。ナポリ王アルフォンソ2世の娘。エステ家姉妹のいとこ。
フェルディナンド1世:ナポリ王。アルフォンソ2世の父。娘のエレオノーラはイザベラとベアトリーチェの母。
シャルル8世:フランス王。ナポリ王国を征服。
オルレアン公ルイ:シャルル8世の死後、フランス王ルイ12世となる。ミラノ公国を征服。

なんといっても、本の題名のように、レオナルド・ダ・ヴィンチに密接に関係のあったイザベラとベアトリーチェの物語である。ベアトリーチェが嫁いだのがルドヴィーコであり、彼がレオナルド・ダ・ヴィンチのパトロンである。ベアトリーチェはレオナルドに描かれるのに消極的だったのだが、姉のイザベラはチェチリア・ガッレラーニを描いたダ・ヴィンチの画を見て歯噛みする。前述のキャツチコピーのように、イザベラがミラノ公妃となり、思うようにダ・ヴィンチに自分を描かせたことになっていたのかも知れないはずなのだから。

ルドヴィーコとベアトリーチェの住まいが、ミラノのスフォルツェスコ城であり、この物語の中心的な舞台となっているのも、嬉しい。
ここを訪ねたのは2005年の10月。
http://www.lares.dti.ne.jp/~taka-ino/milanosforzesco.html

「ダ・ヴィンチ・コード」は読んでいたので、それにかかわる場所は楽しめたのだが、この本も読んでいたなら、もっと楽しめたのにと、ちと残念。

題名の「白鳥たち」というのは、イザベラ、ベアトリーチェ、チェチリア、ルクレツィアをさしている。
そして、それぞれレオナルド・ダ・ヴィンチによる絵が残っているのだ。

イザベラ・デステ
戦争と政変に明け暮れる激動の時代をみごとに生きぬいた。宗教改革の初期 - 名だたる大国が栄えては衰え、世界には不穏な空気がただよっていた。彼女の弟アルフォンソと結婚したルクレツィア・ボルジアとの張り合いはあまりに有名だ。またイザベラは歴史に名を残す芸術家たちのパトロンであり、美術品の蒐集家でもあった。生涯に八人の子を産み、夫フランチェスコの死後も長く生きた。教皇や各国の皇帝や王、ペルジーノ、ラファエロ、ペリーニ、ティツィアーノなどの美の巨匠たちとも親交を結んだ。1527年、神聖ローマ帝国がローマを襲ったとき、イザベラはローマにいて神聖ローマ帝国軍兵士たちが暴虐の限りを尽くしたサッコ・ディ・ローマ - 口ーマ略奪を目の当たりにした。自分が宿にしていたコロンナ宮殿におよそ二千人の友人たちをかくまい、彼らの安全のために、敵とも味方とも交渉した。イザベラはひと筋縄ではいかない女だった。その大胆さと勇気、そして情け深さが、夫の不貞の黙認はもちろん、世間の耳目を奪うような思いきった行動を生んだ。1539年、65歳でこの世を去った。最期に遺した言葉は、「わたしは男たちの世界で生きるすべを学んだ女」だったという。
レオナルドが描いたイザベラの素描は、現在ル-ヴル美術館にある。レオナルドは約束の油彩の肖像をついに仕上げなかった。
レオナルド・ダ・ヴィンチ《イザベラ・デステ》(ルーヴル美術館蔵)
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ベアトリーチェ・デステ
彼女の肖像は、ミラノのサンタ・マリア・デレ・ダラツィエ教会。ダ・ヴインチの「最後の晩餐」は、この教会の修道院食堂の北の壁に描かれているのだが、その向かいの壁に、ほぼ同時期に画家モントルファーノによって描かれた「十字架上のキリスト」がある。
世紀の傑作と向き合う磔刑図の片隅に、修道女たちに護られるようにして祈りを捧げる女性の姿。壁画のほかの部分は良い状態に保たれているのに、この女性の部分だけ絵の具が剥げ落ちて、謎めいた影絵のようになっている。この女性が、権勢を誇ったミラノ大公ルドヴィーコの妻、ベアトリーチェ・デステであり、描いたのはレオナルド・ダ・ヴインチである。
クリストフォロ・ロマーノが制作したベアトリーチェの美しい胸像はルーヴル美術館にある。また、ルドヴィーコとベアトリーチェが横たわる像を頂く大理石の石棺は、いまはパヴィアのチェルトーザ修道院に安置されている。
モントルファーノの壁画「磔刑図」
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残念ながら、ベアトリーチェの胸像の写真は、ネットで探したが見つからなかった。

チェチリア・ガツレラーニ
レオナルドが描いたチェテリアの肖像画〝白貂(てん)を抱く婦人″は、ポーランド、クラクフのチャルトリスキ美術館に所蔵されている。 
レオナルド・ダ・ヴィンチ《白貂を抱く貴婦人》(チャルトリスキ美術館蔵)
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ルクレツィア・クリヴエツリ
レオナルドがルクレツィアを描いたといわれる肖像画〝ベル・フェロニエール〃-本来は〝金物商の妻″の意だが、やがてこの絵の女性がつけているひたい飾りが〝フェロニール〃と呼ばれるようになる-と、ルクレツィアが聖母マリアのモデルだとされる〝岩窟の聖母〃は、ともにルーヴル美術館にある(〝岩窟の聖母″については、ほぼ同じ構図の作品がもう一点あり、こちらはロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている)。
レオナルド・ダ・ヴィンチ《ラ・ベル・フェロニエール》(ルーヴル美術館蔵)
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訳者のあとがきの言葉を借りれば、「わたしたちは登場人物を視線を重ね合わせることで、それらの作品が、画集や美術館ではなく、五百年前の画家の工房に無造作に立てかけてあるところを見ているような気持ちになれる。これこそフィクションの醍醐味というものだろう。」


この本の中で、レオナルドの工房でたくさんの「レダと白鳥」のデッサンを姉妹は目にするのだが、レオナルドが描いた「レダと白鳥」は現存していなくて、残っているのはレオナルドのデッサンをもとに弟子が描いたものだという。
最初に掲げた、装丁家の片岡忠彦氏による美しい表紙は、ボルゲーゼ美術館所蔵の、レオナルド派の画家ソドマによる(といわれる)模写作品をもとに構成されている。
面白いのは、アメリカで出版された本の表紙が同じ素材なのに、全然イメージが違う。
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本の表紙の基になった絵「レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写)《レダ》(ボルゲーゼ美術館蔵)」
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チェザーレ・ダ・セスト(レオナルドの弟子)と思われる《レダと白鳥》(ウィルトン・ハウス蔵)、 《レダ》のもうひとつの有名な模写作品。あしもとの子供(ゼウスが化身した白鳥とレダの子供)が異なる。
卵から生まれるんだね(笑)
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(了)
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コメント

No title

四季歩さん、こんにちわ

ベアトリーチェと言えば、ダンテの神曲を思いだしますが、実在の人物でもいたのですね。ルクレツィアはやはり、ルクレチィア・ボルジアですが、ルクレツィア・クリヴエツリもイザベラ・デステも画集で見たことがあるのを思い出しました。

ダ・ヴィンチの絵では「岩窟の聖母」が最も好きです。

2/29白寿ホール

四季歩さま

2/29白寿ホール【シャコンヌ佐村河内守弦楽作品集CD発売記念コンサート】(アルバムタイトル曲シャコンヌを含む全曲演奏会)のチケットをゲットしましたぁ!!!
というか、できました。

何せ1/14サントリー大ホールで行われる佐村河内守シャコンヌ世界初演(のみ)が一瞬で完売したそうですから、シャコンヌを含む全曲演奏会のチケットゲットは感謝せねばなりません。
これも直にSOLD OUTとなるでしょう。

佐村河内守の世界を堪能してまいります!

失礼しました。

コメントありがとうございます

matsumoさん
この本、面白かったですね。
なにしろ、ダ・ヴィンチのスポンサーで
色々と注文をつけるんですから!
あのダ・ヴィンチに。
なかなか仕事を進めないと文句いったり(笑)
そして、あの時代はイタリアの激動期でしたからね。

ばいおりんひきさん
うわあ!
うらやましいですね。
私は、教えていただいたので、CDを予約しただけです(泣)
ぜひぜひ、堪能していただいて、
その感想をお願いしますね。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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