『居眠り磐音 江戸双紙』第四巻「雪華ノ里」/佐伯泰英

20120215

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九州の日田に入る直前の峠道で、蘭医の中川淳庵と知り合う、彼は前野良沢、杉田玄白と共に「腑分け」をし、「解体新書」の原本の正確なことに驚き、それを翻訳ようとし、長崎に向かうところであった。
中川淳庵を狂信的な僧の群れが襲ったのを助けたのである。
坂崎磐音も長崎に向かうところだった。
許嫁の奈緒が、磐音が国元に戻ったのと入れ違いに、病で父親が倒れた家族を救おうと、遊里に身売りし。長崎の丸山に来ていたのだ。
どこの妓楼かやっと突き止めたのだが、一足違いで小倉に売られた後だった。
その後、奈緒の美貌と気品により、更に格上の遊里にと、客を取る前の身で転売されていく。磐音は一足違いで追いかけていくことになる。

ということで、この巻は次々と全国で有名な遊里を奈緒が移っていき、それを磐音が一足違いで追いかけ、遊里めぐりがメインとなるが、磐音が行くところ常に事件が持ち上がることになる。

この巻に情緒を添えるのは、各遊里で奈緒が置いていく白扇である。
丸山で奈緒の残した白扇に絵があり、夕暮れの陽光に黄金色に染まった泉水の岸辺に幼い男女が立って、そよ吹く風の中、無心に泳ぐ番の鴛鴦を見ていた。磐音と奈緒の思い出の場面である。
奈緒の字で「鴛鴦や 過ぎ去りし日に なに想う」と添えられていた。

次に小倉の海を挟んだ、赤間の妓楼。赤間は壇ノ浦の戦いの後流れ着いた女官が世過ぎに身を沈めたというのが起こりだという。
残された白扇の絵は、波打ち際に押し寄せる波と戯れる七歳ほどの娘と前髪立ちの若者が書かれていた。画面の中央に白鶴城と謳われた関前城の天守閣が描かれていた。これも磐音と奈緒の思い出の場面である。
奈緒の字で「夏雲に 問うや男の 面影を」と添えられていた。

次いで京都島原の妓楼。
残された白扇の絵は、秋景色の山寺の山門の下に若侍と少女が立っている。若侍の手には閼伽桶があり、少女は黄菊を胸に携えていた。豊後関前藩の泰然寺に彼岸のお参りに出かけた時の、磐音と奈緒の姿だ。
奈緒の字で「飛べ飛べや 古里のそら 秋茜」と添えられていた。

そして金沢の妓楼。ここで待っていたのは「那尾」という女性。奈緒は島原を出た直後分かれて江戸に向かったという。
残された白扇の絵は、雪景色の中にぽつねんと娘が立って、空を見上げていた。かたわらには雪を被った赤い実の南天が植えられていた。すでに奈緒のかたわらには磐音の姿はない。
奈緒の字で「風に問う わが夫(せ)はいずこ 実南天」と添えられていた。

そして、ついに江戸の吉原。ここには磐音に過去に助力してもらった吉原会所の頭、四郎兵衛が居て磐音に何かと助力してくれる。
奈緒は「丁字屋」が1200両で買い受けたとわかった。
今は寮で、遊里に必要な遊芸全般を仕込まれており、近々正月に華々しく披露されるのだという。
磐音には、いかんともし難い金額である。
今津屋の主、吉衛門は肩代わりしてもいいと思ったのだが、磐音はそれも運命と断る。
奈緒の近くに居て、奈緒の無事を祈ろう。自分は生涯独身で、と磐音は思っている。

私にとって、この巻を読んでいて懐かしかったのが金沢である。
この本で当時の遊里として、浅野川の母衣町、卯辰、観音坂下、漏尿坂、小立野口、犀川河岸でも河原笹下町とある。
現在、旧茶屋街として観光化されているのが「ひがし茶屋街」、「主計町茶屋街」、「にし茶屋街」がある。

「ひがし茶屋街」には一昨年ぶらぶら歩いて、家族で食事しました。
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去年は、「武蔵が辻」で食事しましたが、昔の風情が残っていて良かった。
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この本に出てくる場所で懐かしかったのが「広坂」
広坂を下る。右側が兼六園である。
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広坂通り
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そして金沢城
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武家屋敷町
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金沢は、こういう時代小説にはぴったりの舞台が残っている良い街である。
私の郷里は富山県なのだが「福光」といって、石川県金沢の隣町なのである。金沢には山越えになるが、それでも家から車で40分くらいで兼六園下に着く。
帰郷して墓参りが済むと金沢に出てしまい、最近はいつも金沢のホテル泊である。そしてのんびりと金沢で遊んでくる。
金沢が郷里みたいなものになっている。
だから、この巻では金沢が舞台のときが面白かった。

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コメント

なるほど。

ご当地モノとして楽しむことができたのですね。私の場合は、このシリーズを読むのを止めようと真剣に考えた巻でした(^o^)/
まあ、結果的にその後の盛り上がりを楽しめたので、止めないでよかったですが(^o^)/
続きが楽しみですね。

No title

四季歩さん、こんにちわ

昨年、京都に行った際、島原も少し歩きましたが、金沢のひがし茶屋街の方が遙かに遊郭の風情が残っていますね。東京も吉原がありますが、こちらは、風情どころではありませんし。

コメントありがとうございました

narkejpさん
私は、関前藩での悪党どもとの戦いが長丁場になると
思っていたら、3巻であっけなく終わったので
拍子抜けしたんです。
NHKドラマがあったので、奈緒との行く末はだいたい
わかっていたので。
「その後の盛り上がり」というのが、気になりますね(笑)

matsumoさん
そういえば、京都はずいぶん行ってますが、
島原は行ってないですね(笑)
東京の吉原跡は、ほんとに言う気にもならないですね。
金沢の「茶屋街」はいいですよね。

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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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