のぞみ

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1968年、小野寺透作(日本)
花色:パールピンク
花形:小輪一重平咲き
開花期:春
香り:微香

2011年5月生田緑地ばら苑にて撮影

ネットでこの薔薇の事を調べていたら、作出者小野寺さんの書いた、この薔薇に「のぞみ」とつけた由来が見つかりました。ここに載せておきます。

《バラになった少女/小野寺透 》
私と仲の良かった妹が、牧師と結婚して教会の事業にたずさわること半年で、その牧師は知る人ぞ知る南方の激戦地ガダルカナルへ出征した。その時生まれてくる子供に”のぞみ”と名づけて行った。
 彼は周囲の兵隊たちと同じく殆ど死んだと同様に倒れていた。その時耳元でアメリカ兵がガヤガヤ話していた。やがて彼は、そのアメリカ兵達の話にアメリカ英語で返事をしてしまった。それは彼が牧師に必要な神学の勉強に、数年間アメリカ留学していたからであった。
 彼の返事を聞いて驚いたのはアメリカ兵であったが、それが縁で彼は通訳の仕事を受け持ち、結局無事帰国することになった。出征時に名付けた”のぞみ”は女の子であって、父親の実家があった満州に渡った。渡った当時(昭和18年頃)の満州は平和であったが、終戦後、例のソ連軍の侵入で、女ばかりの一家の生活は苦しくなり、先ず祖母が亡くなり、次いで母も亡くなり次々に家族が死亡し、”のぞみ”は一人ぼっちになって、近隣の教会関係の人々に助けられ暮らしていた。
 やがて帰国の順番が来て、三歳の”のぞみ”は一人で帰国列車に乗り、はるばる長い汽車の旅を続けて、日本に着き、やっと明日は東京に着く予定が列車の編成の都合で一日延びた。この延びた一日が幼い女の子に限りない悲劇となったのである。それは、この延びた日の東京品川に着く二時間前に、長旅の疲れか”のぞみ”は列車の中で息を引きとってしまったのである。
 一方父親は品川駅に、生まれてはじめてのわが子を迎えに行って、未だ温もりの残っている我が子”のぞみ”を抱いたのである。この様にして父親は”のぞみ”の持ってきた二つの遺骨箱と一緒に浦和の家に帰ってきて、狭い我が家は一度に三つの葬式をすることになった。
 話をバラに移して、私は1968年(昭和43年)頃から実生花を作り始め、最初の作出花に私は忘れ得ぬ、”のぞみ”という名前をつけた。バラの”のぞみ”は浦和では六月の第二週頃に一週間くらい桜草のような花で盛大に咲くが、ヨーロッパの気候では六月から十一月まで咲き続けるので、世界中のバラ花壇に植えられて有名になり、バラを記事にした世界中の本にも載っているし、有名なプロフェショナルのバラ作りの集会に、アマチュアの私が唯一人招かれたりしている。
”のぞみ”が埼玉の浦和生まれであることを思うと、無常の感慨に打たれるのである。 

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コメント

No title

四季歩さん、こんにちは

表題を見て、おつ、新幹線でどこかに行かれたのかと思ったら、バラの名前で、それも、悲しいエピソードがある名前だったのですね。第二次世界大戦が終わった後、日本人の戦死は、米国兵として行った戦死した数名を除けば、0名だと思いますが、やはり、平和は大切ですね。

今でも戦争をやっている国のほか、平和な国でも戦争を待ち望んでいる政治家や経済人がいますが、こう言う人達はさっさと戦争のある国に行って、戦えばよいと思います。

素晴らしい話です。

おはようございます。
近隣の浦和にこのような因果のつるバラが存在していたとは、初めて知りました。
これもまた平和のシンボルとしてのバラですね。様々な角度でバラって奥が深いですよね。

No title

こんなに可憐な花なのに、悲しい話があったんですね。。。お子さんをなくされた父親の気持ちを考えると胸が張り裂けそうです。これから、この薔薇を見たら、平和に暮らしていることに感謝して、いっそうこの花を愛しく思えると思います。

コメントありがとうございました

matsumo さん
まったく同感ですね。
戦争は絶対にすべきではありません。
私の父親、カミさんの父親の話で、戦争とは
悲惨なものだと知っています。

薄荷脳70 さん
私は、自宅には数本のバラしかありませんが、
薔薇にまつわる話とか、背景をできるだけ
知るようにしています。
それで、薔薇の素晴らしさが、また増します。

パスピエさん
この薔薇も、こういう話がありましたね。
やはり薔薇を平和の象徴として、
大切にしたいですよね。
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プロフィール

四季歩

Author:四季歩
とにかく歴史好きです。そして旅も好き。
写真が趣味なので、いきおい記事は写真が中心になります。

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